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動物実験のしくみ

動物実験の歴史や種類、どのように活用されているのか、
また、実験環境を取り巻く様々な規制について解説します。

動物実験とは、広くは動物を使う実験一般(チンパンジーの行動実験なども含む)を指しますが、普通は人間に対して危険が生じる可能性のある化学物質(医薬品などを含みます)や機器を、人間に適用する前にまず動物に対して実験することを意味します。

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動物実験の種類

新薬の研究開発を例にして考えてみましょう。
下の図の「基礎研究」と「非臨床試験」の段階で動物実験は実施されます。
では具体的にどのような試験を実施しているかを見ていきましょう。

基礎研究→非臨床試験→臨床試験→承認申請と審査

非臨床試験の内容

薬効薬理試験・薬としての効果を確かめる試験・どれくらいの量で効果が出るのか、どのような方法で使用するのかなどを研究する

薬物動態試験・体の中での薬の動きを検証する試験・飲み薬であれば、消化管から吸収されて血液を通じて組織全体に回り、肝臓で代謝されて腎臓から尿に排出されるまでの一連の様子を調べる

安全性試験・薬の安全性を検証する試験・患者さんが使用したときに問題が無いか、副作用を起こさないかなどの判断をする

製剤化試験・溶解性、代謝安定性などを分析する試験・体の中でより早く溶けるためにはどうすればよいか、また、薬として安定な形で長く保持するためにはどうしたらいいかなどを研究する

このように人間での臨床試験(治験)に入る前に、 薬の有効性と安全性を担保するために多くの動物実験が必要になってきます。

動物実験に関する規制

現状では多くの動物実験が必要とされていますが、
何の規制もなく動物実験を行えるわけではなく、実際には各種国内法令の下、適正に実施されています。

動物実験・実験動物行政のしくみ。環境省と動物実験を監督する省庁(文部科学省、厚生労働省、農林水産省など)による相互協力により、「福祉向上」と「適正化」を併せた規程を作成。遵守状況の点検、結果公表や外部機関による検証などを行なっている。動物実験・実験動物行政のしくみ。環境省と動物実験を監督する省庁(文部科学省、厚生労働省、農林水産省など)による相互協力により、「福祉向上」と「適正化」を併せた規程を作成。遵守状況の点検、結果公表や外部機関による検証などを行なっている。

具体的には国内の動物実験は以下の法令・ガイドラインの規制を受けています。
・動物の愛護及び管理に関する法律
・実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準
・厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(農水省・文科省版もあり)
・動物実験の適正実施に向けたガイドライン

これらには罰則を伴う厳しい規定も存在します。また、海外の状況も踏まえて各研究機関は出来る限り動物福祉に沿った飼育方法・実験方法を実施することが求められています。

実験動物の愛護に関する基本理念「3Rs」

Replacement(置き換え)、Reduction(削減)、Refinement(洗練)Replacement(置き換え)、Reduction(削減)、Refinement(洗練)

1959年にラッセルとバーチによって提唱された3Rsの概念は、
今では動物実験を実施する上で必要不可欠なものになっています。

動物実験委員会の設置

これらに加えて、動物実験を実施する機関(大学、企業など)には動物実験委員会の設置が求められています。

動物実験責任者←→実施機関の長←→動物実験委員会による審議動物実験責任者←→実施機関の長←→動物実験委員会による審議

すべての動物実験は動物実験の専門家(研究者など)や実験動物の専門家(獣医師など)からなる動物実験委員会による厳正な審査がなされています。

具体的な審査項目

  • ・動物実験等の目的と必要性
  • ・動物実験等の不要な繰り返しに当たらないか
  • ・in vitro実験系および系統発生的に下位動物種への
    置き換えが可能かどうか
  • ・より侵襲の低い動物実験方法への置き換えが可能かどうか
  • ・使用する実験動物種、遺伝学的および微生物学的品質
  • ・使用する実験動物数
  • ・動物実験実施者および飼養者に対する教育訓練の実績
  • ・特殊なケージや飼育環境を適用する場合はそれが必要な理由
  • ・実験処置により発生すると予想される障害や症状および
    苦痛の程度
  • ・苦痛が予想される場合の苦痛軽減処置
  • ・鎮静、鎮痛、麻酔処置
  • ・大規模な外科的処置の繰り返しに当たらないかどうか
  • ・術後管理方法
  • ・実験終了方法(人道的エンドポイント・安楽死の方法など)
  • ・実験実施者、飼養者の労働安全衛生事項

外部検証によるチェック

環境省の発行している「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説」によると、管理者は、定期的に、基準に即した指針の遵守状況について点検を行い、その結果について適切な方法により公表すること、また当該点検結果については、可能な限り、外部の機関等による検証を行うことが求められています。

動物実験を実施している研究機関等は「自己点検・評価」、「情報公開」、「外部検証」が必要とされており、文科省所管の機関に対しては(公社)日本実験動物学会、農水省所管の機関に対しては(公社)日本実験動物協会、厚労省所管の機関に対しては(一財)日本医薬情報センターがそれぞれ検証あるいは認証を実施しており、国際的にはAAALAC International(国際実験動物ケア評価認証協会)による施設認証が実施されています。

このように、動物実験を実施するためには目的や必要性、その内容について3Rsの概念のもと十分に議論されています。不必要な動物実験は撤廃されるべきですが、現在実施されているすべての動物実験が代替法に置き換えられるわけではありません。病態の解明、科学の発展などのためには、まだまだ動物実験が必要不可欠という事実をご理解いただけると幸いです。