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We think the future of laboratory animals.

We think the future of laboratory animals.

実験動物のより良い未来を模索する

実験動物のより良い未来を模索する

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2022.03.03
げっ歯類の胎児・新生児の鎮痛・麻酔および安楽死に関する声明(第2版、2015年)
2022.03.03
飼養保管苦痛軽減基準の解説書に関する要望書(平成28年7月8日)

新着・人気コラム

JALAM会員からの寄稿

今野 兼次郎

コンノ ケンジロウ

国立循環器病研究センター研究所

寄稿文

温故知新、前島賞」

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安居院 高志

アグイ タカシ

北海道大学名誉教授

YouTubeチャンネルの紹介

前JALAM会長の安居院高志先生(北大名誉教授)が、YouTubeチャンネルを開設されました。本チャンネルでは、自然散策や山菜類の魅力を発信されております。

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特集

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針2020年版出版記念 -紹介動画-

 日本実験動物医学専門医協会は、AVMAと翻訳契約を取り交わし、「米国獣医学会 動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン):2020年」版の翻訳本(翻訳者代表 黒澤努、鈴木真)を出版しました。本ガイドラインは、国際的に容認される具体的な安楽死法を示しており、主に獣医師を対象に記載されています。専門的ではありますが、最新の情報を網羅しており、獣医師以外の動物にかかわる方々の指針としても重要な文献です。(原文はこちら

 2013年度版から改訂された2020年版では、第3章にS1コンパニオンアニマル、S2実験動物、S3家畜、S4馬、S5鳥類、S6魚類と水生無脊椎動物、S7野生動物と7つの動物に区分されて記載されています。

 日本実験動物医学会および日本実験動物医学専門医協会は、本指針が広く周知されることで、わが国の動物福祉がより向上することを期待します。また、実験動物ならびにその他の動物の人道的な取り扱いを広めるための啓蒙活動を継続していきます。

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン)2020年版の紹介

https://vimeo.com/719001280

炭酸ガスを用いた安楽死

https://vimeo.com/710990217

Compassion Fatigue(共感疲労)

https://vimeo.com/710990398
https://vimeo.com/720976209

Compassion Fatigueについて、さらに知りたい方はこちらもご覧ください。

安楽死にまつわる諸問題 part2

動物実験従事者におけるCompassion Fatigueの分類(ProQOLを用いた分類)

特集

実験動物のリホーミング

実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準では、第4章実験等の実施上の配慮の項において、「実験に供する期間をできるだけ短くする等実験終了の時期に配慮すること」と記されています。そして、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説によると、実験計画の立案においては、「実験や術後観察の終了の時期(人道的エンドポイント)等について、具体的な計画を立案する必要がある。(p. 114)」と解説されています。また、人道的エンドポイントとは、「実験動物を激しい苦痛から解放するために実験を終了あるいは途中で中止する時期(すなわち安楽死処置を施す時期)を意味する。(p. 142)」と解説されています。こうしたことから、動物実験の終了とは、主として安楽死処置を施すこととも捉えられます。

一方で、安楽死処置については、上述の通り実験動物を激しい苦痛から解放するための措置である反面、「安全性に加え、安楽死処置実施者が感じる精神的不安、不快感、あるいは苦痛に配慮し、科学的研究の目的を損なわない限り、心理的負担の少ない安全な方法を選択すべきである。(p. 159)」とも解説されており、実施者にとっては精神的不安、不快感、あるいは苦痛といった心理的負担を伴う措置であるということも理解されています。

このような安楽死における実施者の心理的負担に関しては、「安楽死にまつわる諸問題」についてのコラムですでに紹介されていますが、動物実験が遂行される中で、必ずしも動物は苦痛を被って実験を終えるものでもありません。こうした動物に対してはどのようにエンドポイントを考えたらよいでしょうか。これらの動物にも安楽死処置を施すのでしょうか。その心理的負担は苦痛から解放するための安楽死処置の場合よりも大きいものになるかもしれません。他に選択肢はないのでしょうか。

特集

蚊のぬれに着目した新しい蚊対策

花王株式会社 難波 綾

【はじめに】

 みなさんは、「最も多くの人のいのちを奪う生き物」は何だと思いますか?答えは「蚊」です。あの小さな体でどうやって?と思われるかもしれません。実は蚊は、人にとって危険な病気を媒介します。一番多くの人のいのちを奪うのは、マラリアです。2021年にはおよそ62万人が亡くなり、このうち48万人ほどがアフリカに住む5歳以下の子供でした。一番多くの人が感染するのは、デング熱です。デング熱は年間3.9億人が感染すると推定されています。

 蚊が媒介する病気の多くには、ワクチンや特効薬がありません。たとえ薬があったとしても、病院が遠かったり診断に時間がかかったり、すぐには手に入らないこともあります。そのため病気を防ぐ上で最も大事なことは、「蚊に刺されないこと」です。人が蚊に刺されないために、これまで多くの取り組みがなされてきました。たとえば東南アジアの行政は殺虫剤を噴霧したり、蚊の幼虫であるボウフラを駆除したりする取り組みを行っています(蚊の幼虫は、鉢やタイヤなどにたまった水の中にいます)。一方で、噴霧に用いられる殺虫成分に抵抗性を示す、つまりこれまでと同じ濃度の殺虫成分では死ななくなってしまった蚊が増えてきています。そのため、より多様な蚊に刺されないための方法の提案が必要だと、私たちは考えました。

 私たちの会社では、食品から洗剤、石鹸、化学品など、多様な製品を取り扱っています。多様な製品を取り扱っているということは、多様なバックグラウンドを持つ研究者がいるということです。ちなみに、今この文章を書いている私は分子生物学が専門です。さまざまな角度から蚊、そして蚊刺されを考えたことで、これまでとは少し視点の違う技術が生まれてきました。このコラムでは、私たちの技術を2つご紹介したいと思います。

コラム

老化研究と実験動物

北里大学獣医学部実験動物学研究室 宍戸晧也

1.はじめに

昨今、アンチエイジングの分野の注目度が高まっており、様々な分野で商品開発や研究がされています。多くの方が、一度は「年老いたくない!」と思ったことがあると思います。人類は古来より不老不死の追求や、死からの蘇りを切望してきました。秦の始皇帝が不死の薬として丹薬を飲んだり、来世の復活を願うエジプト王のミイラとして残したことが広く知られています。現代でも、未来の蘇生技術やクローン技術に期待して、遺体を冷凍保存するビジネスが複数存在します(1)。

我が国を含む先進国では医療(特に感染症分野)が発達したことで、平均寿命が飛躍的に延びました。一方、寿命の延伸によって、今度は新たにがんと生活習慣病、フレイル、ロコモティブシンドローム、認知症、骨疾患などが問題となってきました。2050年には65歳以上の高齢者が6人に1人を占めると推定されており、急速な高齢化が世界的に進むことが危惧されます。生活の質や健康の向上がないまま寿命を延ばすことには、問題があることは明らかです。

この将来直面する問題に先駆けて、わが国では老化の遅延による健康寿命の延長や老化制御、疾患予防、克服を目的としてAMEDでは老化研究の領域に対して支援を行っています。老化研究は国の研究支援機構にとどまらず、Googleは2013年に15億ドルをかけてCalicoというベンチャー子会社を立ち上げるなど、老化とその治療は今や世界的に大きなニーズとなっております。本コラムでは老化研究と実験動物の老化モデルについてご紹介します。

コラム

私観・日本実験動物医学会史(第4回)

第四回 創立認定獣医師と本学会の課題

(このコラムはJALAMニュースレターNo.42/2014.4に掲載された特集を転載しています)

 この特集も 4 回目を迎えた。第一回で「発足当時尽力した人々は私も含め第一線から退く時代 となり、創成期の出来事を残しておきたい・・」と言う初めの目的は、前回の「・・・初めての認定獣医師が誕生した」というところまでを描いたので、達成したと考え、今回は書き残した若干の事柄を記載して、「私観・日本実験動物医学会史」を終えたい。

創立認定獣医師

 暫定制度ながら、1999 年 3 月 25 日に初めての認定獣医師 32 名が誕生した。この後 2 回、合計 3 回で認定された獣医師は暫定制度のもと、筆記試験を経ずに資格認定試験のみで認定獣医師と認定された。

 認定制度を確立するためのプロセスとして、次のようなステップをとることとした。まず暫定制度を制定し、この制度の下で厳しい基準の資格審査により「創立認定獣医師」を認定すること。 つぎに本制度を制定し、創立認定獣医師により試験問題を作成し、筆記試験と若干緩められた基準による資格審査により認定獣医師を認定する。暫定制度は施行後 3 年以内に廃止し、本制度に移行する、というものである。

 暫定制度により認定された創立認定獣医師は 3 年間で 58 名誕生した。筆記試験を課さずに認定し た「創立認定獣医師」に批判もあろうかと思うが、この制度を少しでも早く社会に認知されるため には、早急に一定の数の認定獣医師を作る必要があるという判断があった。また、すでに各研究教育機関等で責任ある立場で活躍している獣医師は、それなりの評価を既にそれぞれの所属する研究機関等や実験動物界から受けており、厳しい資格審査でその事を評価する事で、十分に認定獣医師の認定を受けるにふさわしいという判断もあった。結果として制度設立への長い助走の時期や設立後もほとんど社会に認知されていない時期に頑張っていただいた認定獣医師はまさに創立認定獣医師(Founder)という称号を受領するにふさわしいと思う。創立認定獣医師は、2013 年 3 月 25 日現在の名簿では 33 名に減っており、すでに 25 名 43%の方々が専門医をリタイヤされ た。今後も多くの専門医の方々が第一線から引退されるが、実験動物医学会から専門医制度を引き継いだ日本実験動物医学専門医協会は、創立認定獣医師のみならず専門医をリタイヤされた 方々のお名前を何らかの形で永久に名簿に残していただきたいものである。この場をお借りして 特に創設認定獣医師の方々に対して心から敬意と感謝の意を表したい。

 本制度は 2001 年にスタートしたが、暫定制度が当時第一線で活躍しているベテランの獣医師 を認定して、この制度の基礎を築く性格が大きかったのに対し、本制度はこれから活躍する若手 の専門獣医師を育て認定することが目的となった。2002 年 3 月に初めての資格審査と筆記試験に よる認定獣医師が3名誕生した。未知の新制度に果敢に挑戦して初認定された阿部敏男氏(認定第 59 号) 、梶原典子氏(認定第 60 号)、中井伸子氏(認定第 61 号)にも敬意を表したい。

 難しい筆記試験が加わった理由からか、その後も受験者の数は少なく、6-7 年間はわずか 2-4 名の認定がつづいた。受験者がゼロの年もあり、さすが制度そのものの可否、さらには存続を懸念することもあったが、我慢我慢の時期である。しかし近年は多くの会員非会員が本会主催の教育セミナーやウェットハンド研修に参加し、また受験者も増え、2013 年 3 月に認定された専門医 は 2 桁となり、当時を知るものとして、さらにはこの制度の設立に関わったものとしては、考え深いものがある。

コラム

私観・日本実験動物医学会史(第3回)

第三回 日本実験動物医学会認定獣医師制度の設立

(このコラムはJALAMニュースレターNo.41/2013.8に掲載された特集を転載しています)

教育セミナーのスタート

 実験動物医学会は専門獣医師の育成をめざして発足したため、学会開催毎に教育セミナーを開催することが大きな事業であった。前回にも記載した様に第一回教育セミナーは 1994 年(平成 6 年)3 月 31 日の実験動物医学研究会第一回総会とともに開催した。そしてほぼ同時に、同セミナ ー参加者の登録を開始し、参加証の発行を行なった。また、このセミナーを効果的に行ない、実験動物医学の基礎を網羅するために基本方針を決めた。そこでは、実験動物の遺伝と育種、実験 動物の特性、実験動物の疾病、動物実験技術、動物実験管理学の 5 項目をあげ、これをもとにして講演テーマを決めることとした。

 私もいくつかのセミナーを企画したが、その中で印象的なものを紹介すると、第 122 回日本獣医学会(1996 年・平成 8 年、帯広畜産大学)では東大農学部実験動物学教室の板垣慎一助教授と ともに「実験動物の麻酔について考える」を企画した。この時は板垣先生と大阪大学医学部助教授黒澤努先生の司会で、私がイントロダクションを行ない、東北大学医学部麻酔科学講座加藤正人助教授の「ヒトの麻酔科学:最近の話題」、東大農学部外科学研究室西村亮平助教授の「犬および猫の臨床麻酔」というタイトルで講演をいただいた。ヒトの先進的な麻酔学を紹介していただき、現在の獣医麻酔の先端を紹介してもらう狙いであった。このセミナー会場は実験動物分科会 (日本実験動物医学会)メンバーのみならず他分科会のメンバーも大勢集まり、聴衆で満員にな った。このときまで私は、実験動物分科会は獣医学会では後発のマイナーな分科会であると思っていたが、獣医学会会員の実験動物医学に対する感心の大きさがわかり、企画がよければ多くの 聴衆が集まることを認識した。以後の獣医学会でも我々の分科会の企画には多くの聴衆が集まることはご存知の通りであり、企画者の努力の結果であろう。

 この時のエクスカーションは大雪山の麓の「トムラウシ温泉東大雪荘」であり、今は亡き国立感染研究所の内貴正治獣医科学部長と酒を酌み交わしたのは楽しい思い出である。

 また、板垣先生は本会の理事はもとより学術集会委員会委員長や認定制度検討委員会委員もしていただき、本学会の中心メンバーとして今後の活躍を大いに期待されていたが、1997年・平成 9 年 8 月 8 日に早世された。30 代半ばの一番脂ののった時期であり、大変惜しまれた。

コラム

ちゃんと向き合いたい、
実験動物のこと。

実験動物というとどんなイメージがあるでしょうか。
動物を実験に活用することへの抵抗感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実験動物に携わる関係者の間では実験動物を科学的合理性だけでなく、
動物福祉の観点からも向き合い、飼育環境の改善、実験方法や規制の見直しといった工夫を
日々行っております。

当団体では、そういった日々進化する実験動物に関する情報を
様々なコンテンツを通じて発信しております。
当サイトが、実験動物に関心のある方々の理解を促進し、
よりよい動物と人間の共存関係を実現する一助となれば幸いに存じます。

学会案内を見る

About Laboratory Animals実験動物とは

主な実験動物の種類、実験動物の飼育環境などについて説明します。

詳しくはこちら

Mechanism動物実験のしくみ

動物実験がどのように活かされるのか、また、実験環境を取り巻く規制などについて説明します。

詳しくはこちら

JALAM会員からの寄稿

今野 兼次郎

コンノ ケンジロウ

国立循環器病研究センター研究所

寄稿文

温故知新、前島賞」

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安居院 高志

アグイ タカシ

北海道大学名誉教授

YouTubeチャンネルの紹介

前JALAM会長の安居院高志先生(北大名誉教授)が、YouTubeチャンネルを開設されました。本チャンネルでは、自然散策や山菜類の魅力を発信されております。

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特集

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針2020年版出版記念 -紹介動画-

 日本実験動物医学専門医協会は、AVMAと翻訳契約を取り交わし、「米国獣医学会 動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン):2020年」版の翻訳本(翻訳者代表 黒澤努、鈴木真)を出版しました。本ガイドラインは、国際的に容認される具体的な安楽死法を示しており、主に獣医師を対象に記載されています。専門的ではありますが、最新の情報を網羅しており、獣医師以外の動物にかかわる方々の指針としても重要な文献です。(原文はこちら

 2013年度版から改訂された2020年版では、第3章にS1コンパニオンアニマル、S2実験動物、S3家畜、S4馬、S5鳥類、S6魚類と水生無脊椎動物、S7野生動物と7つの動物に区分されて記載されています。

 日本実験動物医学会および日本実験動物医学専門医協会は、本指針が広く周知されることで、わが国の動物福祉がより向上することを期待します。また、実験動物ならびにその他の動物の人道的な取り扱いを広めるための啓蒙活動を継続していきます。

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン)2020年版の紹介

https://vimeo.com/719001280

炭酸ガスを用いた安楽死

https://vimeo.com/710990217

Compassion Fatigue(共感疲労)

https://vimeo.com/710990398
https://vimeo.com/720976209

Compassion Fatigueについて、さらに知りたい方はこちらもご覧ください。

安楽死にまつわる諸問題 part2

動物実験従事者におけるCompassion Fatigueの分類(ProQOLを用いた分類)

特集

実験動物のリホーミング

実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準では、第4章実験等の実施上の配慮の項において、「実験に供する期間をできるだけ短くする等実験終了の時期に配慮すること」と記されています。そして、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説によると、実験計画の立案においては、「実験や術後観察の終了の時期(人道的エンドポイント)等について、具体的な計画を立案する必要がある。(p. 114)」と解説されています。また、人道的エンドポイントとは、「実験動物を激しい苦痛から解放するために実験を終了あるいは途中で中止する時期(すなわち安楽死処置を施す時期)を意味する。(p. 142)」と解説されています。こうしたことから、動物実験の終了とは、主として安楽死処置を施すこととも捉えられます。

一方で、安楽死処置については、上述の通り実験動物を激しい苦痛から解放するための措置である反面、「安全性に加え、安楽死処置実施者が感じる精神的不安、不快感、あるいは苦痛に配慮し、科学的研究の目的を損なわない限り、心理的負担の少ない安全な方法を選択すべきである。(p. 159)」とも解説されており、実施者にとっては精神的不安、不快感、あるいは苦痛といった心理的負担を伴う措置であるということも理解されています。

このような安楽死における実施者の心理的負担に関しては、「安楽死にまつわる諸問題」についてのコラムですでに紹介されていますが、動物実験が遂行される中で、必ずしも動物は苦痛を被って実験を終えるものでもありません。こうした動物に対してはどのようにエンドポイントを考えたらよいでしょうか。これらの動物にも安楽死処置を施すのでしょうか。その心理的負担は苦痛から解放するための安楽死処置の場合よりも大きいものになるかもしれません。他に選択肢はないのでしょうか。

特集

蚊のぬれに着目した新しい蚊対策

花王株式会社 難波 綾

【はじめに】

 みなさんは、「最も多くの人のいのちを奪う生き物」は何だと思いますか?答えは「蚊」です。あの小さな体でどうやって?と思われるかもしれません。実は蚊は、人にとって危険な病気を媒介します。一番多くの人のいのちを奪うのは、マラリアです。2021年にはおよそ62万人が亡くなり、このうち48万人ほどがアフリカに住む5歳以下の子供でした。一番多くの人が感染するのは、デング熱です。デング熱は年間3.9億人が感染すると推定されています。

 蚊が媒介する病気の多くには、ワクチンや特効薬がありません。たとえ薬があったとしても、病院が遠かったり診断に時間がかかったり、すぐには手に入らないこともあります。そのため病気を防ぐ上で最も大事なことは、「蚊に刺されないこと」です。人が蚊に刺されないために、これまで多くの取り組みがなされてきました。たとえば東南アジアの行政は殺虫剤を噴霧したり、蚊の幼虫であるボウフラを駆除したりする取り組みを行っています(蚊の幼虫は、鉢やタイヤなどにたまった水の中にいます)。一方で、噴霧に用いられる殺虫成分に抵抗性を示す、つまりこれまでと同じ濃度の殺虫成分では死ななくなってしまった蚊が増えてきています。そのため、より多様な蚊に刺されないための方法の提案が必要だと、私たちは考えました。

 私たちの会社では、食品から洗剤、石鹸、化学品など、多様な製品を取り扱っています。多様な製品を取り扱っているということは、多様なバックグラウンドを持つ研究者がいるということです。ちなみに、今この文章を書いている私は分子生物学が専門です。さまざまな角度から蚊、そして蚊刺されを考えたことで、これまでとは少し視点の違う技術が生まれてきました。このコラムでは、私たちの技術を2つご紹介したいと思います。

コラム

老化研究と実験動物

北里大学獣医学部実験動物学研究室 宍戸晧也

1.はじめに

昨今、アンチエイジングの分野の注目度が高まっており、様々な分野で商品開発や研究がされています。多くの方が、一度は「年老いたくない!」と思ったことがあると思います。人類は古来より不老不死の追求や、死からの蘇りを切望してきました。秦の始皇帝が不死の薬として丹薬を飲んだり、来世の復活を願うエジプト王のミイラとして残したことが広く知られています。現代でも、未来の蘇生技術やクローン技術に期待して、遺体を冷凍保存するビジネスが複数存在します(1)。

我が国を含む先進国では医療(特に感染症分野)が発達したことで、平均寿命が飛躍的に延びました。一方、寿命の延伸によって、今度は新たにがんと生活習慣病、フレイル、ロコモティブシンドローム、認知症、骨疾患などが問題となってきました。2050年には65歳以上の高齢者が6人に1人を占めると推定されており、急速な高齢化が世界的に進むことが危惧されます。生活の質や健康の向上がないまま寿命を延ばすことには、問題があることは明らかです。

この将来直面する問題に先駆けて、わが国では老化の遅延による健康寿命の延長や老化制御、疾患予防、克服を目的としてAMEDでは老化研究の領域に対して支援を行っています。老化研究は国の研究支援機構にとどまらず、Googleは2013年に15億ドルをかけてCalicoというベンチャー子会社を立ち上げるなど、老化とその治療は今や世界的に大きなニーズとなっております。本コラムでは老化研究と実験動物の老化モデルについてご紹介します。

コラム

私観・日本実験動物医学会史(第4回)

第四回 創立認定獣医師と本学会の課題

(このコラムはJALAMニュースレターNo.42/2014.4に掲載された特集を転載しています)

 この特集も 4 回目を迎えた。第一回で「発足当時尽力した人々は私も含め第一線から退く時代 となり、創成期の出来事を残しておきたい・・」と言う初めの目的は、前回の「・・・初めての認定獣医師が誕生した」というところまでを描いたので、達成したと考え、今回は書き残した若干の事柄を記載して、「私観・日本実験動物医学会史」を終えたい。

創立認定獣医師

 暫定制度ながら、1999 年 3 月 25 日に初めての認定獣医師 32 名が誕生した。この後 2 回、合計 3 回で認定された獣医師は暫定制度のもと、筆記試験を経ずに資格認定試験のみで認定獣医師と認定された。

 認定制度を確立するためのプロセスとして、次のようなステップをとることとした。まず暫定制度を制定し、この制度の下で厳しい基準の資格審査により「創立認定獣医師」を認定すること。 つぎに本制度を制定し、創立認定獣医師により試験問題を作成し、筆記試験と若干緩められた基準による資格審査により認定獣医師を認定する。暫定制度は施行後 3 年以内に廃止し、本制度に移行する、というものである。

 暫定制度により認定された創立認定獣医師は 3 年間で 58 名誕生した。筆記試験を課さずに認定し た「創立認定獣医師」に批判もあろうかと思うが、この制度を少しでも早く社会に認知されるため には、早急に一定の数の認定獣医師を作る必要があるという判断があった。また、すでに各研究教育機関等で責任ある立場で活躍している獣医師は、それなりの評価を既にそれぞれの所属する研究機関等や実験動物界から受けており、厳しい資格審査でその事を評価する事で、十分に認定獣医師の認定を受けるにふさわしいという判断もあった。結果として制度設立への長い助走の時期や設立後もほとんど社会に認知されていない時期に頑張っていただいた認定獣医師はまさに創立認定獣医師(Founder)という称号を受領するにふさわしいと思う。創立認定獣医師は、2013 年 3 月 25 日現在の名簿では 33 名に減っており、すでに 25 名 43%の方々が専門医をリタイヤされ た。今後も多くの専門医の方々が第一線から引退されるが、実験動物医学会から専門医制度を引き継いだ日本実験動物医学専門医協会は、創立認定獣医師のみならず専門医をリタイヤされた 方々のお名前を何らかの形で永久に名簿に残していただきたいものである。この場をお借りして 特に創設認定獣医師の方々に対して心から敬意と感謝の意を表したい。

 本制度は 2001 年にスタートしたが、暫定制度が当時第一線で活躍しているベテランの獣医師 を認定して、この制度の基礎を築く性格が大きかったのに対し、本制度はこれから活躍する若手 の専門獣医師を育て認定することが目的となった。2002 年 3 月に初めての資格審査と筆記試験に よる認定獣医師が3名誕生した。未知の新制度に果敢に挑戦して初認定された阿部敏男氏(認定第 59 号) 、梶原典子氏(認定第 60 号)、中井伸子氏(認定第 61 号)にも敬意を表したい。

 難しい筆記試験が加わった理由からか、その後も受験者の数は少なく、6-7 年間はわずか 2-4 名の認定がつづいた。受験者がゼロの年もあり、さすが制度そのものの可否、さらには存続を懸念することもあったが、我慢我慢の時期である。しかし近年は多くの会員非会員が本会主催の教育セミナーやウェットハンド研修に参加し、また受験者も増え、2013 年 3 月に認定された専門医 は 2 桁となり、当時を知るものとして、さらにはこの制度の設立に関わったものとしては、考え深いものがある。

コラム

私観・日本実験動物医学会史(第3回)

第三回 日本実験動物医学会認定獣医師制度の設立

(このコラムはJALAMニュースレターNo.41/2013.8に掲載された特集を転載しています)

教育セミナーのスタート

 実験動物医学会は専門獣医師の育成をめざして発足したため、学会開催毎に教育セミナーを開催することが大きな事業であった。前回にも記載した様に第一回教育セミナーは 1994 年(平成 6 年)3 月 31 日の実験動物医学研究会第一回総会とともに開催した。そしてほぼ同時に、同セミナ ー参加者の登録を開始し、参加証の発行を行なった。また、このセミナーを効果的に行ない、実験動物医学の基礎を網羅するために基本方針を決めた。そこでは、実験動物の遺伝と育種、実験 動物の特性、実験動物の疾病、動物実験技術、動物実験管理学の 5 項目をあげ、これをもとにして講演テーマを決めることとした。

 私もいくつかのセミナーを企画したが、その中で印象的なものを紹介すると、第 122 回日本獣医学会(1996 年・平成 8 年、帯広畜産大学)では東大農学部実験動物学教室の板垣慎一助教授と ともに「実験動物の麻酔について考える」を企画した。この時は板垣先生と大阪大学医学部助教授黒澤努先生の司会で、私がイントロダクションを行ない、東北大学医学部麻酔科学講座加藤正人助教授の「ヒトの麻酔科学:最近の話題」、東大農学部外科学研究室西村亮平助教授の「犬および猫の臨床麻酔」というタイトルで講演をいただいた。ヒトの先進的な麻酔学を紹介していただき、現在の獣医麻酔の先端を紹介してもらう狙いであった。このセミナー会場は実験動物分科会 (日本実験動物医学会)メンバーのみならず他分科会のメンバーも大勢集まり、聴衆で満員にな った。このときまで私は、実験動物分科会は獣医学会では後発のマイナーな分科会であると思っていたが、獣医学会会員の実験動物医学に対する感心の大きさがわかり、企画がよければ多くの 聴衆が集まることを認識した。以後の獣医学会でも我々の分科会の企画には多くの聴衆が集まることはご存知の通りであり、企画者の努力の結果であろう。

 この時のエクスカーションは大雪山の麓の「トムラウシ温泉東大雪荘」であり、今は亡き国立感染研究所の内貴正治獣医科学部長と酒を酌み交わしたのは楽しい思い出である。

 また、板垣先生は本会の理事はもとより学術集会委員会委員長や認定制度検討委員会委員もしていただき、本学会の中心メンバーとして今後の活躍を大いに期待されていたが、1997年・平成 9 年 8 月 8 日に早世された。30 代半ばの一番脂ののった時期であり、大変惜しまれた。

コラム