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We think the future of laboratory animals.

We think the future of laboratory animals.

実験動物のより良い未来を模索する

実験動物のより良い未来を模索する

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2023.12.09
【JALAM会員限定動画】症例から考えるイヌのストレスと行動異常(日本獣医生命科学大学 水越美奈先生)
2023.12.08
【新刊紹介】フレックネル実験動物の麻酔と鎮痛 第5版 ―齧歯類からネコ・イヌ・鳥類まで―
2023.12.08
【コラム更新】シンガポールにおける動物研究施設の運用(Chugai Pharmabody Research Pte. Ltd. 山本 駿)

新着・人気コラム

JALAM会員からの寄稿

今野 兼次郎

コンノ ケンジロウ

国立循環器病研究センター研究所

寄稿文

温故知新、前島賞」

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安居院 高志

アグイ タカシ

北海道大学名誉教授

YouTubeチャンネルの紹介

前JALAM会長の安居院高志先生(北大名誉教授)が、YouTubeチャンネルを開設されました。本チャンネルでは、自然散策や山菜類の魅力を発信されております。

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特集

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針2020年版出版記念 -紹介動画-

 日本実験動物医学専門医協会は、AVMAと翻訳契約を取り交わし、「米国獣医学会 動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン):2020年」版の翻訳本(翻訳者代表 黒澤努、鈴木真)を出版しました。本ガイドラインは、国際的に容認される具体的な安楽死法を示しており、主に獣医師を対象に記載されています。専門的ではありますが、最新の情報を網羅しており、獣医師以外の動物にかかわる方々の指針としても重要な文献です。(原文はこちら

 2013年度版から改訂された2020年版では、第3章にS1コンパニオンアニマル、S2実験動物、S3家畜、S4馬、S5鳥類、S6魚類と水生無脊椎動物、S7野生動物と7つの動物に区分されて記載されています。

 日本実験動物医学会および日本実験動物医学専門医協会は、本指針が広く周知されることで、わが国の動物福祉がより向上することを期待します。また、実験動物ならびにその他の動物の人道的な取り扱いを広めるための啓蒙活動を継続していきます。

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン)2020年版の紹介

https://vimeo.com/719001280

炭酸ガスを用いた安楽死

https://vimeo.com/710990217

Compassion Fatigue(共感疲労)

https://vimeo.com/710990398
https://vimeo.com/720976209

Compassion Fatigueについて、さらに知りたい方はこちらもご覧ください。

安楽死にまつわる諸問題 part2

動物実験従事者におけるCompassion Fatigueの分類(ProQOLを用いた分類)

特集

実験動物のリホーミング

実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準では、第4章実験等の実施上の配慮の項において、「実験に供する期間をできるだけ短くする等実験終了の時期に配慮すること」と記されています。そして、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説によると、実験計画の立案においては、「実験や術後観察の終了の時期(人道的エンドポイント)等について、具体的な計画を立案する必要がある。(p. 114)」と解説されています。また、人道的エンドポイントとは、「実験動物を激しい苦痛から解放するために実験を終了あるいは途中で中止する時期(すなわち安楽死処置を施す時期)を意味する。(p. 142)」と解説されています。こうしたことから、動物実験の終了とは、主として安楽死処置を施すこととも捉えられます。

一方で、安楽死処置については、上述の通り実験動物を激しい苦痛から解放するための措置である反面、「安全性に加え、安楽死処置実施者が感じる精神的不安、不快感、あるいは苦痛に配慮し、科学的研究の目的を損なわない限り、心理的負担の少ない安全な方法を選択すべきである。(p. 159)」とも解説されており、実施者にとっては精神的不安、不快感、あるいは苦痛といった心理的負担を伴う措置であるということも理解されています。

このような安楽死における実施者の心理的負担に関しては、「安楽死にまつわる諸問題」についてのコラムですでに紹介されていますが、動物実験が遂行される中で、必ずしも動物は苦痛を被って実験を終えるものでもありません。こうした動物に対してはどのようにエンドポイントを考えたらよいでしょうか。これらの動物にも安楽死処置を施すのでしょうか。その心理的負担は苦痛から解放するための安楽死処置の場合よりも大きいものになるかもしれません。他に選択肢はないのでしょうか。

特集

シンガポールにおける動物研究施設の運用

Chugai Pharmabody Research Pte. Ltd. 山本 駿

【はじめに】

シンガポールにあるChugai Pharmabody Research Pte. Ltd.の山本と申します。私が駐在を始めた2020年3月から長きにわたり、新型コロナウイルスに関する行動制限があったのですが、今はそれらもなくなり、シンガポールライフを楽しんでいます。

さて今回は、シンガポールにおける動物研究施設の運営について取り上げたいと思います。私は元々有機合成化学を専門としており、動物実験に従事したことがなかったのですが、現職の業務の一環として、弊社のInstitutional Animal Care & Use Committee (IACUC) 事務局を務めることになりました。最初は初めてのことで戸惑いが大きかったのですが、前任者から数カ月間の引継ぎ期間を設けてもらい、弊社が契約している管理獣医師からのサポートや、シンガポールにおける事務局に必須のトレーニングの受講を通じて、必要な情報を迅速にキャッチアップすることができました。

現在弊社は、管理獣医師、社内の研究者3名、社内の非研究者2名、社外委員1名に加えて、事務局の私を含む8名体制でIACUCを運用しています。今回はシンガポールにおけるIACUC運営を通じて私が知ったこと、経験したことなどをごく簡単にご紹介させていただきます。

【動物研究施設管理の概要】

シンガポールにおける動物研究施設はライセンス制で運営されており、Ministry of National Development (MND、日本語では“国家開発省”と訳されます) のサブ機関であるNational Parks Board (NParks) 内にあるAnimal & Veterinary Service (AVS) という組織が、動物研究施設を管理しています。AVSは動物の健康と福祉を総合的に管理しており、その一環として動物研究施設の管理も行っております。

AVSは動物研究施設の運用に関するガイドラインの作成・ライセンスの付与・年次の査察・必要なトレーニングの提供等を行っており、動物研究施設はガイドラインに基づいた施設運用、研究用動物の管理、AVSへの必要な情報やレポート(Annual ReportやIncident Report)の提出、および年次査察の受け入れが義務付けられています。(図1)

図1. シンガポールの動物研究施設管理の概要

【ライセンス】

ライセンスについてもう少し詳しく説明します。新たに動物研究施設の運用をスタートするには、AVSからの査察を受ける必要があり、その査察をパスすると、ライセンスが発行されます。ライセンスの期限は1年で、更新前に再度AVSからの査察をパスすることでライセンスが更新されます。

AVSの査察は、書類査察と実際の施設の査察の2部構成となっており、それぞれガイドラインに沿った運用ができているか細かくチェックされます。私が初めて査察対応をしたときは、「どんな厳しい指摘がされるのだろうか?」「ライセンスが剥奪されたらどうしよう?」「そもそも英語のやり取りがちゃんとできるんだろうか?」と準備段階から胃がキリキリする思いでした。しかしながら、査察自体は細部にわたって行われるのですが、査察員の対応がとても丁寧で、一方的な指摘ではなくこちらの意図を確認してくれたり、 “どうすればもっと良くなるか” を一緒にディスカッションしたりすることもでき、安堵したことを思い出します。

なおAVSの査察は原則毎年受ける必要がありますが、国際的な第三者認証機関であるAssociation for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International (AAALACi) 認証を受けた施設では、AAALACiのsite visitがある年に限り、site visitをAVSの査察に置き換えることができる、という運用もされています。

コラム

蚊のぬれに着目した新しい蚊対策

花王株式会社 難波 綾

【はじめに】

 みなさんは、「最も多くの人のいのちを奪う生き物」は何だと思いますか?答えは「蚊」です。あの小さな体でどうやって?と思われるかもしれません。実は蚊は、人にとって危険な病気を媒介します。一番多くの人のいのちを奪うのは、マラリアです。2021年にはおよそ62万人が亡くなり、このうち48万人ほどがアフリカに住む5歳以下の子供でした。一番多くの人が感染するのは、デング熱です。デング熱は年間3.9億人が感染すると推定されています。

 蚊が媒介する病気の多くには、ワクチンや特効薬がありません。たとえ薬があったとしても、病院が遠かったり診断に時間がかかったり、すぐには手に入らないこともあります。そのため病気を防ぐ上で最も大事なことは、「蚊に刺されないこと」です。人が蚊に刺されないために、これまで多くの取り組みがなされてきました。たとえば東南アジアの行政は殺虫剤を噴霧したり、蚊の幼虫であるボウフラを駆除したりする取り組みを行っています(蚊の幼虫は、鉢やタイヤなどにたまった水の中にいます)。一方で、噴霧に用いられる殺虫成分に抵抗性を示す、つまりこれまでと同じ濃度の殺虫成分では死ななくなってしまった蚊が増えてきています。そのため、より多様な蚊に刺されないための方法の提案が必要だと、私たちは考えました。

 私たちの会社では、食品から洗剤、石鹸、化学品など、多様な製品を取り扱っています。多様な製品を取り扱っているということは、多様なバックグラウンドを持つ研究者がいるということです。ちなみに、今この文章を書いている私は分子生物学が専門です。さまざまな角度から蚊、そして蚊刺されを考えたことで、これまでとは少し視点の違う技術が生まれてきました。このコラムでは、私たちの技術を2つご紹介したいと思います。

コラム

老化研究と実験動物

北里大学獣医学部実験動物学研究室 宍戸晧也

1.はじめに

昨今、アンチエイジングの分野の注目度が高まっており、様々な分野で商品開発や研究がされています。多くの方が、一度は「年老いたくない!」と思ったことがあると思います。人類は古来より不老不死の追求や、死からの蘇りを切望してきました。秦の始皇帝が不死の薬として丹薬を飲んだり、来世の復活を願うエジプト王のミイラとして残したことが広く知られています。現代でも、未来の蘇生技術やクローン技術に期待して、遺体を冷凍保存するビジネスが複数存在します(1)。

我が国を含む先進国では医療(特に感染症分野)が発達したことで、平均寿命が飛躍的に延びました。一方、寿命の延伸によって、今度は新たにがんと生活習慣病、フレイル、ロコモティブシンドローム、認知症、骨疾患などが問題となってきました。2050年には65歳以上の高齢者が6人に1人を占めると推定されており、急速な高齢化が世界的に進むことが危惧されます。生活の質や健康の向上がないまま寿命を延ばすことには、問題があることは明らかです。

この将来直面する問題に先駆けて、わが国では老化の遅延による健康寿命の延長や老化制御、疾患予防、克服を目的としてAMEDでは老化研究の領域に対して支援を行っています。老化研究は国の研究支援機構にとどまらず、Googleは2013年に15億ドルをかけてCalicoというベンチャー子会社を立ち上げるなど、老化とその治療は今や世界的に大きなニーズとなっております。本コラムでは老化研究と実験動物の老化モデルについてご紹介します。

コラム

ちゃんと向き合いたい、
実験動物のこと。

実験動物というとどんなイメージがあるでしょうか。
動物を実験に活用することへの抵抗感をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実験動物に携わる関係者の間では実験動物を科学的合理性だけでなく、
動物福祉の観点からも向き合い、飼育環境の改善、実験方法や規制の見直しといった工夫を
日々行っております。

当団体では、そういった日々進化する実験動物に関する情報を
様々なコンテンツを通じて発信しております。
当サイトが、実験動物に関心のある方々の理解を促進し、
よりよい動物と人間の共存関係を実現する一助となれば幸いに存じます。

学会案内を見る

About Laboratory Animals実験動物とは

主な実験動物の種類、実験動物の飼育環境などについて説明します。

詳しくはこちら

Mechanism動物実験のしくみ

動物実験がどのように活かされるのか、また、実験環境を取り巻く規制などについて説明します。

詳しくはこちら

JALAM会員からの寄稿

今野 兼次郎

コンノ ケンジロウ

国立循環器病研究センター研究所

寄稿文

温故知新、前島賞」

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安居院 高志

アグイ タカシ

北海道大学名誉教授

YouTubeチャンネルの紹介

前JALAM会長の安居院高志先生(北大名誉教授)が、YouTubeチャンネルを開設されました。本チャンネルでは、自然散策や山菜類の魅力を発信されております。

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特集

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針2020年版出版記念 -紹介動画-

 日本実験動物医学専門医協会は、AVMAと翻訳契約を取り交わし、「米国獣医学会 動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン):2020年」版の翻訳本(翻訳者代表 黒澤努、鈴木真)を出版しました。本ガイドラインは、国際的に容認される具体的な安楽死法を示しており、主に獣医師を対象に記載されています。専門的ではありますが、最新の情報を網羅しており、獣医師以外の動物にかかわる方々の指針としても重要な文献です。(原文はこちら

 2013年度版から改訂された2020年版では、第3章にS1コンパニオンアニマル、S2実験動物、S3家畜、S4馬、S5鳥類、S6魚類と水生無脊椎動物、S7野生動物と7つの動物に区分されて記載されています。

 日本実験動物医学会および日本実験動物医学専門医協会は、本指針が広く周知されることで、わが国の動物福祉がより向上することを期待します。また、実験動物ならびにその他の動物の人道的な取り扱いを広めるための啓蒙活動を継続していきます。

米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン)2020年版の紹介

https://vimeo.com/719001280

炭酸ガスを用いた安楽死

https://vimeo.com/710990217

Compassion Fatigue(共感疲労)

https://vimeo.com/710990398
https://vimeo.com/720976209

Compassion Fatigueについて、さらに知りたい方はこちらもご覧ください。

安楽死にまつわる諸問題 part2

動物実験従事者におけるCompassion Fatigueの分類(ProQOLを用いた分類)

特集

実験動物のリホーミング

実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準では、第4章実験等の実施上の配慮の項において、「実験に供する期間をできるだけ短くする等実験終了の時期に配慮すること」と記されています。そして、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説によると、実験計画の立案においては、「実験や術後観察の終了の時期(人道的エンドポイント)等について、具体的な計画を立案する必要がある。(p. 114)」と解説されています。また、人道的エンドポイントとは、「実験動物を激しい苦痛から解放するために実験を終了あるいは途中で中止する時期(すなわち安楽死処置を施す時期)を意味する。(p. 142)」と解説されています。こうしたことから、動物実験の終了とは、主として安楽死処置を施すこととも捉えられます。

一方で、安楽死処置については、上述の通り実験動物を激しい苦痛から解放するための措置である反面、「安全性に加え、安楽死処置実施者が感じる精神的不安、不快感、あるいは苦痛に配慮し、科学的研究の目的を損なわない限り、心理的負担の少ない安全な方法を選択すべきである。(p. 159)」とも解説されており、実施者にとっては精神的不安、不快感、あるいは苦痛といった心理的負担を伴う措置であるということも理解されています。

このような安楽死における実施者の心理的負担に関しては、「安楽死にまつわる諸問題」についてのコラムですでに紹介されていますが、動物実験が遂行される中で、必ずしも動物は苦痛を被って実験を終えるものでもありません。こうした動物に対してはどのようにエンドポイントを考えたらよいでしょうか。これらの動物にも安楽死処置を施すのでしょうか。その心理的負担は苦痛から解放するための安楽死処置の場合よりも大きいものになるかもしれません。他に選択肢はないのでしょうか。

特集

シンガポールにおける動物研究施設の運用

Chugai Pharmabody Research Pte. Ltd. 山本 駿

【はじめに】

シンガポールにあるChugai Pharmabody Research Pte. Ltd.の山本と申します。私が駐在を始めた2020年3月から長きにわたり、新型コロナウイルスに関する行動制限があったのですが、今はそれらもなくなり、シンガポールライフを楽しんでいます。

さて今回は、シンガポールにおける動物研究施設の運営について取り上げたいと思います。私は元々有機合成化学を専門としており、動物実験に従事したことがなかったのですが、現職の業務の一環として、弊社のInstitutional Animal Care & Use Committee (IACUC) 事務局を務めることになりました。最初は初めてのことで戸惑いが大きかったのですが、前任者から数カ月間の引継ぎ期間を設けてもらい、弊社が契約している管理獣医師からのサポートや、シンガポールにおける事務局に必須のトレーニングの受講を通じて、必要な情報を迅速にキャッチアップすることができました。

現在弊社は、管理獣医師、社内の研究者3名、社内の非研究者2名、社外委員1名に加えて、事務局の私を含む8名体制でIACUCを運用しています。今回はシンガポールにおけるIACUC運営を通じて私が知ったこと、経験したことなどをごく簡単にご紹介させていただきます。

【動物研究施設管理の概要】

シンガポールにおける動物研究施設はライセンス制で運営されており、Ministry of National Development (MND、日本語では“国家開発省”と訳されます) のサブ機関であるNational Parks Board (NParks) 内にあるAnimal & Veterinary Service (AVS) という組織が、動物研究施設を管理しています。AVSは動物の健康と福祉を総合的に管理しており、その一環として動物研究施設の管理も行っております。

AVSは動物研究施設の運用に関するガイドラインの作成・ライセンスの付与・年次の査察・必要なトレーニングの提供等を行っており、動物研究施設はガイドラインに基づいた施設運用、研究用動物の管理、AVSへの必要な情報やレポート(Annual ReportやIncident Report)の提出、および年次査察の受け入れが義務付けられています。(図1)

図1. シンガポールの動物研究施設管理の概要

【ライセンス】

ライセンスについてもう少し詳しく説明します。新たに動物研究施設の運用をスタートするには、AVSからの査察を受ける必要があり、その査察をパスすると、ライセンスが発行されます。ライセンスの期限は1年で、更新前に再度AVSからの査察をパスすることでライセンスが更新されます。

AVSの査察は、書類査察と実際の施設の査察の2部構成となっており、それぞれガイドラインに沿った運用ができているか細かくチェックされます。私が初めて査察対応をしたときは、「どんな厳しい指摘がされるのだろうか?」「ライセンスが剥奪されたらどうしよう?」「そもそも英語のやり取りがちゃんとできるんだろうか?」と準備段階から胃がキリキリする思いでした。しかしながら、査察自体は細部にわたって行われるのですが、査察員の対応がとても丁寧で、一方的な指摘ではなくこちらの意図を確認してくれたり、 “どうすればもっと良くなるか” を一緒にディスカッションしたりすることもでき、安堵したことを思い出します。

なおAVSの査察は原則毎年受ける必要がありますが、国際的な第三者認証機関であるAssociation for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International (AAALACi) 認証を受けた施設では、AAALACiのsite visitがある年に限り、site visitをAVSの査察に置き換えることができる、という運用もされています。

コラム

蚊のぬれに着目した新しい蚊対策

花王株式会社 難波 綾

【はじめに】

 みなさんは、「最も多くの人のいのちを奪う生き物」は何だと思いますか?答えは「蚊」です。あの小さな体でどうやって?と思われるかもしれません。実は蚊は、人にとって危険な病気を媒介します。一番多くの人のいのちを奪うのは、マラリアです。2021年にはおよそ62万人が亡くなり、このうち48万人ほどがアフリカに住む5歳以下の子供でした。一番多くの人が感染するのは、デング熱です。デング熱は年間3.9億人が感染すると推定されています。

 蚊が媒介する病気の多くには、ワクチンや特効薬がありません。たとえ薬があったとしても、病院が遠かったり診断に時間がかかったり、すぐには手に入らないこともあります。そのため病気を防ぐ上で最も大事なことは、「蚊に刺されないこと」です。人が蚊に刺されないために、これまで多くの取り組みがなされてきました。たとえば東南アジアの行政は殺虫剤を噴霧したり、蚊の幼虫であるボウフラを駆除したりする取り組みを行っています(蚊の幼虫は、鉢やタイヤなどにたまった水の中にいます)。一方で、噴霧に用いられる殺虫成分に抵抗性を示す、つまりこれまでと同じ濃度の殺虫成分では死ななくなってしまった蚊が増えてきています。そのため、より多様な蚊に刺されないための方法の提案が必要だと、私たちは考えました。

 私たちの会社では、食品から洗剤、石鹸、化学品など、多様な製品を取り扱っています。多様な製品を取り扱っているということは、多様なバックグラウンドを持つ研究者がいるということです。ちなみに、今この文章を書いている私は分子生物学が専門です。さまざまな角度から蚊、そして蚊刺されを考えたことで、これまでとは少し視点の違う技術が生まれてきました。このコラムでは、私たちの技術を2つご紹介したいと思います。

コラム

老化研究と実験動物

北里大学獣医学部実験動物学研究室 宍戸晧也

1.はじめに

昨今、アンチエイジングの分野の注目度が高まっており、様々な分野で商品開発や研究がされています。多くの方が、一度は「年老いたくない!」と思ったことがあると思います。人類は古来より不老不死の追求や、死からの蘇りを切望してきました。秦の始皇帝が不死の薬として丹薬を飲んだり、来世の復活を願うエジプト王のミイラとして残したことが広く知られています。現代でも、未来の蘇生技術やクローン技術に期待して、遺体を冷凍保存するビジネスが複数存在します(1)。

我が国を含む先進国では医療(特に感染症分野)が発達したことで、平均寿命が飛躍的に延びました。一方、寿命の延伸によって、今度は新たにがんと生活習慣病、フレイル、ロコモティブシンドローム、認知症、骨疾患などが問題となってきました。2050年には65歳以上の高齢者が6人に1人を占めると推定されており、急速な高齢化が世界的に進むことが危惧されます。生活の質や健康の向上がないまま寿命を延ばすことには、問題があることは明らかです。

この将来直面する問題に先駆けて、わが国では老化の遅延による健康寿命の延長や老化制御、疾患予防、克服を目的としてAMEDでは老化研究の領域に対して支援を行っています。老化研究は国の研究支援機構にとどまらず、Googleは2013年に15億ドルをかけてCalicoというベンチャー子会社を立ち上げるなど、老化とその治療は今や世界的に大きなニーズとなっております。本コラムでは老化研究と実験動物の老化モデルについてご紹介します。

コラム