コットンラット〜全身に病気を併存する不思議な実験動物〜
1)併存症モデル-慢性腎臓病を例に-
私たちは、雌のHIS/Hiphが加齢性に腎臓の尿細管間質病変を主徴とする慢性腎臓病を呈すること、赤血球産生を促進するホルモンであるエリスロポエチン量が腎臓内で有意に低下し、腎性貧血に至ることを発見しました(7)。別途、雌のHIS/Hiphでは加齢性に骨盤結合が開離し、子宮頸部が肥厚することも見出しました(8)。興味深いことに、骨盤結合が開離した個体は高頻度に子宮蓄膿症を発症し、子宮蓄膿症は慢性腎臓病を増悪させました。骨盤結合開離と慢性腎臓病は卵巣摘出により抑制され、腎臓の病変部ではエストロゲン受容体が発現しました。まとめると、一見無関係と思われる骨盤結合の開離と慢性腎臓病を同時に発症すると、前者は後者の病態を間接的に増悪させ、両者の発症には性ホルモンが関与することが明らかとなりました。
以上のように、コットンラットは複数疾患を併存した際の相互作用やそれらを結びつける因子を解明できる「併存症モデル」となると考えます。