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理研マウスENUミュータジェネシスプロジェクトを利用したフォワードジェネティクス研究

コラム

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3. 世界初のミスセンス変異によって表現型を発現するCrim1変異マウス

 最後にM2047マウスから得られたimlaマウスを紹介します11)。詳しい説明は省略しますが、ENU変異を誘発したC57BL/6遺伝的背景のM2047マウス12)とDBA/2マウスの交配で誕生したF1マウス同士の交配を行った結果、常染色体潜性(劣性)形式で小眼球症と合指症を発症するマウスが誕生し、imla (iwate microphthalmia with limb anomalies)マウスと命名しました。

 imlaマウスの原因遺伝子の同定は連鎖解析ではなく、全エクソーム解析で行いました。メンデル遺伝する明確な異常を引き起こす遺伝子変異のほとんどは、ゲノム上のエクソンとその周辺領域に存在しており、全エクソーム解析ではゲノム上のエクソンとその周辺領域のDNA配列を全て決定します。その結果、imlaマウス特異的な変異として、218個の変異が抽出され(ENU投与によって、たくさんの変異が誘発されている)、この中の71個は遺伝子産物の機能に影響を及ぼす変異であると予測されました。データベースを用いて、71個の候補遺伝子について調べた結果、Crim1遺伝子のKOマウスが小眼球症、合指症といったimlaマウスと類似の表現型を示すことがわかりました12)Crim1遺伝子周辺の遺伝子多型マーカーを用いた連鎖解析によって、Crim1におけるミスセンス変異(p.Cys140Ser)が imlaマウスの原因変異であることが証明されました。

 C57BL/6遺伝的背景のCrim1 KOマウスは胎生期に死亡しますが、imlaマウスの遺伝的背景をC57BL/6にすると同様に胎生致死になりました。つまり、imlaマウスはC57BL/6とDBA/2をミックスした遺伝的背景であったため、運よく胎生致死を免れて同定されたマウスだったのです。CRIM1はいろいろな成長因子と結合し、それらの活性・局在の調節に関わっていることが報告されています14)。しかし、これらの機能だけでは説明がつかないCrim1 KOマウスの表現型が存在しており、CRIM1は他にもさまざまな機能を持っているはずです。imlaマウスは世界初のミスセンス変異によって明確な表現型を示すCrim1変異マウスであり、今後、CRIM1の新規機能の同定に役立つ可能性を持っています。

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JALAM教育委員会

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