動物福祉の評価ツールのご紹介-1
〜AVMA主催の“学生動物福祉状況の評価コンテスト”〜
動物の福祉状況を良くしていこうと言われていますが、日本では、法律、指針や、日本学術会議のガイドラインにおいて、動物の福祉状況に関する評価方法の、簡便で使いやすい具体的な記述・指標は見当たりません。特に動物実験においては、法規制が求めるところが機関管理なので、具体的な記述や指標を設定することにむずかしいところがあることも理解ができますが、動物実験を管理し施行状況の評価を任される立場の視点から見ると、もう少し情報が欲しいところです。
実験動物の福祉状況の評価について世界に目を向けると、2014年にTexas A&M UniversityのBonnie V. BeaverとAAALAC InternationalのKathryn Bayneが、“Animal Welfare Assessment Considerations”1)という記事で評価法を公開しています。本コラムでは、数回にわたって、この視点から少し深堀りしてみましょう。
まず触れたいのは、“北米で、学生を対象とした動物福祉状況の評価コンテストが行われる”ことを紹介したイリノイ大学のニュース2)です。学生だけでなく、私たち実験動物医学の専門家の能力向上にも役立つのではないかと思い、紹介することにしてみました。
AVMAが学生対象に動物福祉評価コンテストを開催
イリノイ大学のニュースが詳しく紹介していたのは、AVMA(American Veterinary Medical Association)が先月(2022年11月)に開催した、“学生を対象とした動物福祉評価コンテスト:ANIMAL WELFARE ASSESSMENT CONTEST” 3)(下図は、その登録募集のチラシのコピー)についてです。本コンテストは、もともとミシガン州立大学(MSU)とパデュー大学の教員が提案し、2002年にMSU、ゲルフ大学、ウィスコンシン大学、パデュー大学の代表4チームが集まって始めた小さなコンテストから始まりました。これが、2014年には、北米各地の学校から合計28チーム、116名の参加者を集めるようになり、いまの形になったとのことです。当初は対象動物を家畜としていましたが、現在では、生産動物、コンパニオンアニマル、実験動物、エキゾチックアニマルにまで拡大しています。今年(2022年)の動物種には、展示用に飼育された鶏(愛玩用)、乳用牛(主に搾乳群に入らないオス)、水族館のタコが含まれます。仮想のしなりを設定は、アニマルシェルターの犬・猫です。参加者は、輸送、住居、健康、トレーニング、退役 、生産、屠殺/安楽死など、各動物種の生活のすべての側面における福祉を評価することになっています。頭足類を評価の対象に入れるところは、AVMAが時代の趨勢を敏感に反映していこうとする姿勢がうかがえます。このような先取の精神には見習う点があります。