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環境の記事一覧

実験動物の環境エンリッチメント

環境エンリッチメントとは、読んで字のごとく動物の飼育環境を豊かにするものであり、それによって飼育動物の正常な行動の多様性を引き出し、異常行動を減らして、動物の福祉と健康を改善するための工夫を指すものです。環境の肯定的な利用を増やすことを目指して行われる環境エンリッチメントは、動物園や水族館などの展示動物の分野で特に進んでおり、近年では、有害駆除された動物屠体の有効利用を結び付けた大牟田市動物園などでの取り組みが有名です。

Wild meǽt Zoo~駆除された動物を動物園のご馳走に~(大牟田市動物園)
エンリッチメント大賞HPから引用
http://www.zoo-net.org/enrichment/award/2019/

医薬品開発における実験動物への環境エンリッチメントの導入も、展示動物ほどではありませんが、進んできています。と言うのも研究において再現性の低下に繋がるノイズは避けなければなりませんが、その一方で動物福祉や動物本来の行動発現の観点から必要不可欠だからです。また、ストレスが大きい環境ではそれだけ個体差が出やすくなるとも考えられています。そのため、環境エンリッチメントを実験動物に導入するイメージとしては、実験動物の生活環境を高い満足度で維持して実験に対する感度を良くし、バラつきを抑える感じでしょうか。では現在どのようなものが具体的に導入されているかを見てみましょう。

まずは基本中の基本でもある巣材です。通常、マウスやラットなどのげっ歯類の飼育には紙や木製チップで出来た床敷と呼ばれるものを敷きますが、それに加えて最近では立体的な巣作りが出来るように縮れた紙のようなものを入れる場合が多くなってきています。この紙はほぐすことで非常にボリュームを増すことが出来ますが、げっ歯類は本来、地中に巣穴を掘って生活しているため、何かと接触することで安心感が得られると考えられているからです。ちなみにこんな専用のもの、予算の関係で入れられないよという場合は、ケージの中にティッシュを1枚入れてあげるのだけでも効果的です。彼らはそれを器用に引き裂いて巣材代わりに使用します。これら巣材はコストパフォーマンスに優れており、闘争の軽減や離乳の成功率などに寄与すると考えられています。

Shepherd Specialty Papers社HPから引用
http://www.ssponline.com/index.htm

続いてはシェルターです。目的は先ほどの巣材とほぼ同様です。先ほどの写真にも一部紙製の使い捨てシェルターがありましたが、こちらのカラフルなものは滅菌・洗浄して何度も使うことが可能なものです。基本的には巣の代わりになるものですが、プラケージで飼育している際に避けては通れない漏水事故の際の逃げ場所としても活用できます。また、右下のトンネルは使い捨てですが、マウスを直接、手でハンドリングするのではなく、このようなものを用いることでマウスのストレスが軽減されるとの報告(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0066401)もあります。

Bio-Serv社HPから引用
https://www.bio-serv.com/

続いて、かじり具です。左上の木のブロックはげっ歯類が、その他はウサギやイヌで使用することが多いものです。右のコングはペットでも使用されているものですので、なじみ深いのではないでしょうか。これらはかじることでストレス発散になると考えられています。なおコングはチョココルネのチョコ無しみたいな形(中が空洞)をしていますので、中にペースト状の餌を塗り込むことによって食事自体を飽きさせず、時間をかけて食事させるという方法もあります(実験動物のイヌの場合にはこのような使い方はほとんどされません)。ちなみに木のブロックに限らず木の製品は良くあるのですが、有害物質が含まれていないという実験動物に必要な分析証明を取る場合には値段が跳ね上がります。小さいものでもだいたい1個100円以上しますので、これだったら100円のカマボコを買ってその板をあげた方が良いな・・・とも思ったりもしました(笑)

Bio-Serv社HPから引用

色々とアイテムを紹介してきましたが、実験動物における環境エンリッチメントとして忘れてはならないのはペアまたはグループによる飼育です。実験動物は動物園で飼育されているような猛獣とは異なり、群れで行動している動物がほとんどです。そのため、実験に支障をきたさない範囲でペアまたはグループ飼育にする必要があります。国際基準に準拠している研究現場ではこれらの理由から基本的に単独飼育は認められず、単独飼育をする場合には動物実験申請をする際に科学的根拠が求められています。

NC3Rs HPから引用
https://www.nc3rs.org.uk/3rs-resources/housing-and-husbandry

環境エンリッチメントは何でもかんでも導入すれば良いものではなく、マウスに対するビー玉など、導入することでかえって不安を増大させるものもあります。そのため、飼育環境が改善することが報告されているものを導入するか、もしくは改善が認められることを自らの目で確認する必要があります。これらの取り組みをエンリッチメントプログラムなどと呼びますが、動物実験施設では定期的にこれら環境エンリッチメント導入の是非を検証することが求められています。

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