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臨床獣医師の記事一覧

実験動物に対する印象革命<前編>

〜動物実験には多くの獣医師が関わっていますが、獣医師の果たすべき役割は、診療、公衆衛生や食の安全など多岐にわたります。今回は、実験動物に直接の関わりのない臨床獣医師から見た動物実験への意見を紹介します〜
                               JALAM学術集会委員会

動物が大好きで大好きで・・・それだけで獣医師になった一個人Kの実験動物に対する印象となぜそのように考えるようになったのかについての背景、そして、M社さんのビーグルやAさんに出会って変化した実験動物に対する印象について。そして最後にこれからの実験動物についての希望を少しだけ書かせていただきます。

はじめに。このコラムは実験動物とそれに関わる皆様を批判するものではありません。しかし、それを期待してこのコラムを読もうとしてくださった方にこそ読んでいただきたいものになるよう書かせていただきました。

主人公のKは、少し?いや、かなり??変わり者ですが、正直な実験動物に対する印象とその変化を、周囲の一般市民の声とともに紹介します。

このコラムを読んでいただいて実験動物に実際に関わっていらっしゃる皆さんと一般市民とのイメージのギャップが少しでも埋まり、実験動物に対する理解が進めば幸いです

まず、Kの事を、少し紹介させていただきます。

幼少期より、どうしてもなりたかった獣医師になるため、一浪してやっとこさ大学に入り、無事卒業、その後、埼玉で2年間、新潟で4年目になるまだまだ駆け出しの獣医師です。

3年ほど前に、実験動物施設に勤める友人の紹介でAさんと出会い、Aさんの人柄とビーグルへの愛に感動し、微力ながらリホーミングを手伝わせていただいています。

そして、去年一児の母となり育児をしつつ動物病院の手伝いを少しこなしながら毎日を過ごしています。

趣味は動植物のお世話、読書、お酒です。

少しKという人物が分かっていただけましたでしょうか?

こちらの図ではKの実験動物に対する印象の変化をグラフにしました。

Kは、幼少期より犬猫以外のいろいろな動物に囲まれて育ち、特に父が連れて帰ってくる実験動物がメインで、あとはKが捕まえてきたダンゴムシやカナヘビが主でした。父の影響も少なからず受けながら、自然と幼稚園の頃から、将来の夢は獣医さんでした。

小学校に上がり、Kにとって身近な生き物であったラットを小学校の夏休みの工作として全身骨格模型を作成し、意気揚々と持参したところクラスの友達に泣かれてしまったのをよく覚えています。そのくらい実験動物とは密に接して育ちました。

しかし、学年が進むにつれて兄弟が増え母の手も回らなくなったために父も実験動物を連れて帰ってくることがなくなりました。それにより自然とKの中から実験動物という概念は消えていきました。

実験動物と密に接していた時は悪いイメージはありませんでしたが、関りがなくなってからは身近なものでは無くなったため普通という印象でした。

余談ではありますが、中学校では三年間柔道部に所属し、朝から晩まで練習三昧・・・神奈川県の大会で3位に入賞するまで自分を鍛え上げました。おかげで身長はそこからのびなくなり、肩幅もふくらはぎもアスリートになりました。高校では馬術部に所属し主将を務め早朝から夜まで一日のほとんどを厩舎で過ごしました。おかげさまさまで、家族とは一緒に洗濯をまわしてもらえなくなり、高校の教室でもファブリーズをかけられる・・・などどっぷり馬漬けでした。というように、Kは、やりだしたらそれだけを追及するタイプで、周りが見えなくなりやすいです。猪突猛進というやつでしょうか??

普通になった実験動物の印象に変化が出るのは、高校に入ってからです。獣医大学について調べるようになり、その中で実験動物について興味をもちました。Kなりに図書館に通ったりインターネットで調べたりと色々行いました。しかし、肝心な部分については詳しくは書かれておらず直接聞くしかないと思い、猪突猛進のKは製薬会社さん、日本実験動物協会さん、動物愛護団体さんにメールを送りました。

しかし、返事をくれたのは動物愛護団体さんのみで、ここからKの中の実験動物に対してのイメージが偏ることになりました。そこでの情報については割愛させていただきますが、主に虐待の映像や写真でした。当時のKには刺激が強く、ものすごく印象に残ったのを覚えています。

実験動物に対する印象は日に日に悪くなってゆきました。

<中編へ続く>

特集

実験動物に対する印象革命<中編>

〜動物実験には多くの獣医師が関わっていますが、獣医師の果たすべき役割は、診療、公衆衛生や食の安全など多岐にわたります。今回は、実験動物に直接の関わりのない臨床獣医師から見た動物実験への意見を紹介します〜
                               JALAM学術集会委員会

大学入学を機に、愛護活動には前々から興味があったのもあり、返事をくれた動物愛護団体に所属し、野良猫問題、多頭飼育崩壊などなど様々な問題に関わらせてもらいました。

当時実際の現場をみせていただく中で、自分でも様々なメディアを使って知識として知ったような気でいた自分を恥ずかしく思ったのをよく覚えています。知識として知っていたことと、実際の現場とは全く違っており、さらに刺激が強いものだったからです。特に、多頭飼育崩壊は顕著で、新聞や雑誌からは到底イメージできなかった匂いを感じ、生々しい動物の遺体などを目の当たりにし、同じ人間がやったこととは到底思えませんでした。話が脱線してしまいましたが、そのような体験を経て書籍やインターネット、伝聞などのメディアだけでは、実際に起きていることを把握するには不十分なんだなと思うようになりました。まさに百聞は一見に如かずですね。

ここで実験動物についても実際の現場に飛び込んでみればよかったのですが、当時は学業にアルバイトにサークルに愛護活動にと・・・余裕なく毎日を過ごしていたため、実験動物について調べなおす猶予はありませんでした。

実験動物に対する印象は変わらず悪いまま、次に実験動物と関わることができたのは、大学の研究室に配属された4年生でした。研究用に飼育されている実験動物は、基本の世話はきちんと行われていたため、犬もそこそこなついており、身体的にはなんの問題もありませんでした。強いて挙げれば、犬舎はある程度の広さがあるものの、他の犬との交流や広いところでの運動は実施されていなかったため、犬としては少し欲求不満なのかなというくらいの印象でした。実験動物についての授業では、主に3Rsや実験動物の取り扱い方、種類などについてでした。Kは実際の現場では、どんな実験がどのように行われていて、実験動物はどのような状態なのか?新しい薬ができるまでにはどの過程でどのくらいの動物実験を行う必要があるのかなど知りたかったのですが、知りたいところには触れてもらえませんでした。実験動物の先生にも質問をさせてもらったことがありますが、将来そっちの道に進むわけではないことが分かると急に面倒くさそうな態度になり、“今忙しいからまた今度ね~”のように有耶無耶にされてしまったのを覚えています。これによって就職の希望がないと話せないようなことなんだな、と実験動物のイメージがKの中でさらに悪化してゆきました。

そしてそのまま大学を卒業。小動物臨床の個人病院に就職し、3年目で結婚を機に夫が開業し、忙しく過ごしていましたが、それから1年後に、大学時代の友人の紹介で実験動物ブリーダーM社のAさんのビーグルリホーミングのお話を聞かせてもらう機会があり、実際に実験動物だったビーグルと会ってみることになりました。するとKの実験動物の印象が激変。雷に打たれたらこんな感じなんだろうなというくらい衝撃でした。

Aさんが紹介してくれたビーグルは、まず、しっぽを振って人に寄っていきます。初めてKと会ったのにもかかわらず、知識として知っていた実験動物とは違い、決して噛みついたり大暴れしたり縮こまって震えたりすることはなかったです。体重管理もばっちりなので動物病院で目にする管理不足の飼い犬よりも状態がよく見えました。お迎えしてから一週間もすると新しい環境にも慣れ、徐々に個体それぞれの個性が出てきて簡単なコマンドを理解するようになり、一般的な家庭で暮らしていくためにある程度のしつけを行うのですが、何を教えていても楽しいらしく常に上機嫌で吸収も早いように感じました。施設でもとても大切に扱われていたのだろうなと容易に想像できました。まさに百聞は一見に如かず!!これまでの実験動物に対するイメージは新規の場所では縮こまり怯え、もしかしたら唸り声をあげてくる子もいるかも・・・とマイナスイメージでしたが、M社さんのビーグルが180度変えてくれました。さらに、Aさんからも実験動物について大変詳細なお話を伺うことができ、これまでの実験動物に対する疑念がスッキリ晴れて、もっと早くにAさんとビーグル達に出会えていたら、在学中あんなにもやっとしながら過ごすこともなく、もっと精力的に授業にも取り組めたのになと思いました。ビーグルをお迎えしたのを機に、Kの実験動物に対する印象はうなぎ上りです。

ここまでがKの実験動物に対するイメージの変化についてお話させていただきました。

<後編へ続く>

特集

実験動物に対する印象革命<後編>

〜動物実験には多くの獣医師が関わっていますが、獣医師の果たすべき役割は、診療、公衆衛生や食の安全など多岐にわたります。今回は、実験動物に直接の関わりのない臨床獣医師から見た動物実験への意見を紹介します〜
                               JALAM学術集会委員会

最後にKがビーグルをお迎えしたことによって、K以外も大きな印象変化があったお話を紹介します。

動物病院関係者からの答えですが、ビーグルに関わりを持つ前は、ほぼ全員が実験動物に対する悪い印象をもっていました。

また、ほとんどが想像、妄想の域であるのに注目していただければと思います。

誰もが確かな情報を得たわけではなく、実験動物という響きや検索で引っ掛かってくる画像や動画、SNSの広告バナーなどちらっと眼に入った強烈なイメージをそのまま当人の実験動物に対するイメージとしてしまっているのが容易に想像できます。

そして気になったのが殺処分という言葉でした。安楽死ではなく殺処分と言っているのは実験動物施設と保健所を混同しているからなのか・・・はたまた、酷いことをしている!というイメージから導き出した言葉だったのか・・・・アンケートをとった9名のうち2名がそう回答していました。

ですが実際にM社さんのビーグルを見てからは、悪い印象が拭い去られ、良い印象に変わりました。人によっては、自分で実際にアニマルウェルフェアのセミナーに参加してみたりと、従来の実験動物に対するイメージに疑問を持った方もいました。

実験動物は現在、決して酷い扱いを受けてはいませんし、そこで働く方々も動物が好きで、動物のことを考えて働いていらっしゃる方ばかりです。なのに、なぜ実験動物に対するネガティブなイメージが払拭されないのでしょうか??それは、公開されている情報の少なさに原因があるのではないかと思っています。皆さんもお肉がどうやってできるのか知っていても薬がどうやってできているのか知っている方は少ないのではないでしょうか?

Kのような一般の獣医師にも実験動物のこれからのために何か出来ることはないのでしょうか?

ビーグルを迎えて以降、Kはビーグルのリホーミングの里親探しに関わらせて頂くようになり、一般の家庭へ里子に出す際、実験動物について、“しつこいだろ!”というほど里親希望さんにはお話を聞いてもらっています。やはりどの里親さんも実験動物と聞くと最初は良い印象をお持ちではありません。Kはこの子たちの果たしてきた役割のことや、日夜私たちのため、動物のためにと薬を開発している方々の話を懇々とし、それから、実際に本人たちに会っていただいているのですが、実際のビーグルはそんな長い説明を一瞬で体現し、印象をがらりと変えてくれます。誰に対しても初対面から尻尾を振り振り、とても愛想よくご挨拶をするビーグルを見て、最初は“実験動物だったんですね・・・”というような言い方をしていたにも関わらず、“とても大切にされていたんですね。私たちのためにありがとうね。”とビーグルに言葉をかけてくれるまでに心象変化される方ばかりで、K自身もM社さんのビーグルが持つ力に大変びっくりさせられています。

Kはまだまだ微力ですが、K自身の経験、そしてKの周りの人たちの経験から、実際に目にすることの大切さを実感しました。ビーグルの、そして実験動物のイメージを少しでも変え、皆さんの心にも印象革命がおこるとよいなと思っています。

最後に、実験動物に関わるお仕事をされている皆様へ、動物実験とは実際、どんなことをしているのか、新しい薬ができるまでの大まかな過程も含め、一般の方にわかりやすい言葉で、もう少し説明して頂けるともっともっと実験動物に対する理解が進むのではないかと考えます。

薬は私たちの生活に欠かせないものだからこそ、食育のように、学生の教育に組み込むなど、ちゃんと理解する必要があるのではないかと思います。昔のKのように一方からの情報のみで判断せざるを得ない状況の若者を減らすためにも是非ともご考慮頂ければ幸いです。

このコラムを最後までお読みいただき本当にありがとうございます。 最後は実験動物に関わる方へのメッセージで終わっていますが、言い換えれば、ご覧になってくださった全ての皆様に是非興味をもって頂き、お子様や、お友達、パートナーとの夕飯の話題にでも上げて頂ければ幸いです。みんなで実験動物に対して正しい知識を持ち、話し合えば、より良い実験動物の未来が見えてくるのではないかと思います!

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