環境エンリッチメントとは、読んで字のごとく動物の飼育環境を豊かにするものであり、それによって飼育動物の正常な行動の多様性を引き出し、異常行動を減らして、動物の福祉と健康を改善するための工夫を指すものです。環境の肯定的な利用を増やすことを目指して行われる環境エンリッチメントは、動物園や水族館などの展示動物の分野で特に進んでおり、近年では、有害駆除された動物屠体の有効利用を結び付けた大牟田市動物園などでの取り組みが有名です。
医薬品開発における実験動物への環境エンリッチメントの導入も、展示動物ほどではありませんが、進んできています。と言うのも研究において再現性の低下に繋がるノイズは避けなければなりませんが、その一方で動物福祉や動物本来の行動発現の観点から必要不可欠だからです。また、ストレスが大きい環境ではそれだけ個体差が出やすくなるとも考えられています。そのため、環境エンリッチメントを実験動物に導入するイメージとしては、実験動物の生活環境を高い満足度で維持して実験に対する感度を良くし、バラつきを抑える感じでしょうか。では現在どのようなものが具体的に導入されているかを見てみましょう。