食品の検査に用いられる動物実験の推移(微生物編)
・ウサギ・マウス結紮腸管ループ試験
本試験では、動物を一定期間絶食させた後、麻酔下で開腹し、小腸に両端を結紮した腸管ループを複数作成します。ループ内に試験液を投与した後、小腸を腹腔内に戻し、腹壁を縫合します。数時間後に再度開腹し、ループ内に液体の貯留が認められたものを陽性とします。本試験法は、1990年版には、ウサギの結紮腸管ループ試験が毒素原性大腸菌の易熱性エンテロトキシンの検出法として、ウサギ、マウスの結紮腸管ループ試験がセレウス菌の下痢原性毒素の検出法として掲載されています。2004年版と2018年版には、マウスの結紮腸管ループ試験がセレウス菌の下痢原性毒素の検出法として掲載されています。
・乳のみマウス法
本試験では、生後2〜5日の乳のみマウスの胃内に試験液を投与し、腸管内の液体貯留量を測定します。試験液の投与は、注射器の先に1cmほどの長さのポリエチレンチューブを使って経口的に行いますが、注射器で直接経皮的に胃内投与する方法もあります。1990年版にのみ、毒素原性大腸菌の易熱性エンテロトキシンの検出法として掲載されていました。
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ARRIVEガイドライン2.0が公開されました
7月14日にNC3Rs(英国3Rセンター)にてARRIVEガイドライン2.0が公開(https://arriveguidelines.org/)されました。2010年に初めて公開されたARRIVEガイドラインは、動物実験計画において最低限記載すべき項目をまとめたものであり、Natureをはじめ多くの学術雑誌に支持されているガイドラインです。
そもそもこのガイドラインが作成された背景には、動物実験の再現性があまりにも低い(一説には70%以上の実験が再現できない)と言われてきたことがあります。その一因として実験方法の詳細が述べられていないとの指摘がありました。
英国の機関が、動物実験の記載がある271報(1999-2005)の論文を精査したところ、研究の仮説・目的を記載し、かつ動物の数と特徴が記載されていたのは271報のうち、わずか59%であったことを報告(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0007824)しています。
これらの事を受けてNC3Rsは記載すべき20の項目を定めて2010年にARRIVEガイドラインとして発表しました。多くの研究機関や出版社から支持されてきたものの、記載項目が多いことからも問題の根本的な解決には至りませんでした。そこで改訂版であるARRIVEガイドライン2.0が新たに公開されました。
ARRIVEガイドライン2.0の主な変更点は以下のとおりです。
記載すべき最低限の項目を10項目に絞った「ARRIVE Essential 10」とそれらを補完する「Recommended Set」に分類した
ARRIVE Essential 10は以下のとおりです。なお正式な日本語訳は日本実験動物学会等、公的機関によるアナウンスをお待ちください。
1. Study design(研究計画)
2. Sample size(サンプルサイズ)
3. Inclusion and exclusion criteria(包含基準と除外基準)
4. Randomisation(ランダム化)
5. Blinding(盲検化)
6. Outcome measures(実験の帰結)
7. Statistical methods(統計学的方法)
8. Experimental animals(実験動物の情報)
9. Experimental procedures(実験処置)
10. Results(結果)
前回のガイドラインが20項目であったことからも項目数を絞って記載しやすくなっていることが分かります。通常の動物実験審査においては3~5の項目を審査することは少ないのですが、今後はこのあたりも審査することが求められてくるかもしれません。