食品の検査に用いられる動物実験の推移(微生物編)
・ボツリヌス毒素毒性試験
マウス毒性試験:
本試験は、ボツリヌス毒素を検出するための試験で、15〜20gのマウスを各群2匹以上用います。第1群は試験液をそのまま、第2群は100℃、10分加熱した試験液をマウスの腹腔内に投与します。マウスは4日間観察します。ボツリヌス毒素を投与されたマウスは、後肢の運動麻痺、歩行困難、腹部の陥没、呼吸停止による死亡という特徴のある症状を示します。ボツリヌス毒素は易熱性で80℃数分の加熱で失活するため、第1群が死亡し、第2群が生存した場合、ボツリヌス毒素の存在が疑われます。
マウス毒性中和試験:
ボツリヌス菌はA型~G型まで7型に分類されています。本試験は、血清学的にボツリヌス菌の型別を調べるため、上記のマウス毒性試験と同時に行われることが多い試験です。第1群は事前にA型抗毒素血清を腹腔内投与後、30分以内に試験液を腹腔内投与します。(投与前に試験液と抗毒素血清を混合処理し、同時に投与する方法もあります。)マウスは4日間観察します。同様に第2群以降はB~Gの各型の抗血清を事前投与後に試験液を腹腔内投与します。マウスが生存した場合、その抗血清の型の毒素であることが証明されます。
1990年版、2004年版、2018年版のすべてにボツリヌス毒素毒性試験として掲載されています。特に、2018年版では、容器包装詰低酸性食品(いわゆる真空パック詰食品)の「ボツリヌス接種試験法」において、上記のマウス毒性試験がボツリヌス毒素を検出するための「公定法」として掲載されています。
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ARRIVEガイドライン2.0が公開されました
7月14日にNC3Rs(英国3Rセンター)にてARRIVEガイドライン2.0が公開(https://arriveguidelines.org/)されました。2010年に初めて公開されたARRIVEガイドラインは、動物実験計画において最低限記載すべき項目をまとめたものであり、Natureをはじめ多くの学術雑誌に支持されているガイドラインです。
そもそもこのガイドラインが作成された背景には、動物実験の再現性があまりにも低い(一説には70%以上の実験が再現できない)と言われてきたことがあります。その一因として実験方法の詳細が述べられていないとの指摘がありました。
英国の機関が、動物実験の記載がある271報(1999-2005)の論文を精査したところ、研究の仮説・目的を記載し、かつ動物の数と特徴が記載されていたのは271報のうち、わずか59%であったことを報告(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0007824)しています。
これらの事を受けてNC3Rsは記載すべき20の項目を定めて2010年にARRIVEガイドラインとして発表しました。多くの研究機関や出版社から支持されてきたものの、記載項目が多いことからも問題の根本的な解決には至りませんでした。そこで改訂版であるARRIVEガイドライン2.0が新たに公開されました。
ARRIVEガイドライン2.0の主な変更点は以下のとおりです。
記載すべき最低限の項目を10項目に絞った「ARRIVE Essential 10」とそれらを補完する「Recommended Set」に分類した
ARRIVE Essential 10は以下のとおりです。なお正式な日本語訳は日本実験動物学会等、公的機関によるアナウンスをお待ちください。
1. Study design(研究計画)
2. Sample size(サンプルサイズ)
3. Inclusion and exclusion criteria(包含基準と除外基準)
4. Randomisation(ランダム化)
5. Blinding(盲検化)
6. Outcome measures(実験の帰結)
7. Statistical methods(統計学的方法)
8. Experimental animals(実験動物の情報)
9. Experimental procedures(実験処置)
10. Results(結果)
前回のガイドラインが20項目であったことからも項目数を絞って記載しやすくなっていることが分かります。通常の動物実験審査においては3~5の項目を審査することは少ないのですが、今後はこのあたりも審査することが求められてくるかもしれません。