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マウスやラットの技術トレーニングで使用される代替法教材

コラム

 シミュレーター(模型)や映像教材は、様々な教育現場における技術トレーニングに活用されています。特に医療分野や獣医療分野では様々な臨床技術に関する教材が開発されており、医師や獣医師の育成に使用されてきました。マウスやラットなどの小型齧歯類を対象とした教材についても、近年国内の複数のメーカーで開発が進められており、各施設の教育現場で浸透してきています。これらの代替法教材は初学者が技術を習得する際に、技術のイメージや手順を覚える際の助けになります。生体を使ったトレーニングを行う前にシミュレーターや映像教材を用いて事前学習を行うことにより、効率良く技術を習得することができます。さらに動物実験技術の教育現場で代替法教材を導入することは、実験動物福祉(3Rs: Replacement, Reduction, Refinement)に配慮した教育の実施に貢献します。このコラムでは2022年時点で、国内で入手可能な小型齧歯類の技術トレーニング用代替法教材を紹介します。

1. シミュレーター(模型)

マウスシミュレーター: Mimicky® Mouse

 Mimicky® Mouseはマウスの質感やサイズ、重量などを精巧に再現したシミュレーターです。初心者を対象としたシミュレーターであり、動物の抑え方や投与の手順などを確認する際に使用されます。尾の部分には模擬血管が埋め込まれており、尾静脈投与の練習が可能です。尾は本体と取り外しできるようになっており、尾の部分だけ別途購入し付け替えて使用することができます。マウス個体のシミュレーターは世界的に珍しく、その再現性の高さから海外からの評価も高いようです。Mimicky® Mouseの使用例についてはここから動画で確認できます。

また、同社よりサルの静脈採血・投与のシミュレーター(Mimicky® Vessel)も販売されています。

マウスの尾静脈投与・採血のシミュレーター:マウス尾静脈シミュレーター

 尾静脈からの投与・採血に特化したシミュレーターで、尾の部分のみの形で日本クレア株式会社から販売されており、ここから使用方法の動画を視聴できます。シリコン製の尾の内部に尾静脈のチューブが2本埋め込まれており、マウスの尾静脈が精巧に再現されています。保定器に接続し、インクなどの模擬血液をチューブ内に充填後、採血・投与のトレーニングを行います。実際に生体で投与・採血を行う時と比べて難易度はやや低く設定されており、初心者が手順を覚える上で調度よい難易度になっています。また材質の特性から耐久性が高く、繰り返し使用することができます。

ラットシミュレーター:NATSUME RAT

 ラットの基本手技を訓練するための初心者用シミュレーターの一つです。訓練可能な技術は保定、経口投与、尾静脈内投与・採血、気管挿管です。NATSUME RATは比較的古くから使用されてきた国産シミュレーターですが、近年リニューアルが行われ、材質が改良されました。ラットシミュレーターについては国内外で複数のものが存在します。実物のラットと各ラットシミュレーターの形態的な比較を調査した論文で、NATSUME RATは他のシミュレーターと比較し、頭部の形状や血管の位置、尾の構造をはじめとした各部位において形態の再現度が高かったと報告されています(1)。

株式会社夏目製作所 HP

2. 映像教材

 実際に、動画による視覚的イメージが、技術の習得に大きく貢献することが、アメリカの獣医学生を対象とした調査で明らかとなっています。犬の外科手術の際に、教員の講義内容(声)、シュミュレーターでの練習内容、自らまとめたノート、動画教材の視覚的イメージなどの学習内容うち、記憶をどこからリコールしたかを調査したところ、動画の視覚的イメージと回答した学生が圧倒的に多かったと報告されています(2)。

 映像教材はビデオカメラがあれば簡単に作成することが可能であり、各施設においてオリジナルの動画が作成・活用されています。また各種関連団体でマウスやラットの基本手技のDVDが販売されています。

 映像教材と上述のシミュレーターと組み合わせることによって学習効果はさらに高まります。

・ビデオジャーナル:JoVE

JoVE(Journal of Visualized Experiments)は動物実験技術に限らず様々な分野の実験技術をマニュアル付きで多数公開している査読審査式のビデオジャーナルです。各実験技術の動画が専門家の解説付きでまとめられており、新しく実験系を立ち上げる際などに役立ちます。

 JoVEに掲載されている実験動画の例:A Protocol for Housing Mice in an Enriched Environment

解剖シミュレーションアプリ:3D Rat Anatomy

 研究目的で解剖を行う際には、速やかかつ適切に臓器を採材することが要求されますが、そのためには各臓器の位置関係を理解しておく必要があります。3D Anatomyシリーズは3Dアプリの特性を利用することで、各臓器の立体的な位置関係を学習するのに有用な教材です。このシリーズでは犬や牛、鳥類をはじめとした様々な動物種のアプリがラインナップされていますが、小型齧歯類ではラットのアプリが販売されています。アプリはPC(WindowsおよびMacOS)、iPad、iPhone、Androidスマートフォンなど各種端末にダウンロードすることができます。3D Rat Anatomyは画面上の動物の各部位を拡大縮小、回転することができ、各器官の位置関係を容易に可視化することができます。また、骨、筋肉、内臓の透過度を調整したりすることで観察したい部位を強調することができます。なお3D Rat Anatomyは海外製品のため、器官名の表記がすべて英語となります。

biosphera HPにアプリのデモ動画が掲載されています。

[参考文献]

1. Corte GM, Humpenöder M, Pfützner M, Merle R, Wiegard M, Hohlbaum K, Richardson K, Thöne-Reineke C, Plendl J. Anatomical Evaluation of Rat and Mouse Simulators for Laboratory Animal Science Courses. Animals (Basel). 2021, 11(12):3432. 

2. Langebæk R, Tanggaard L, Berendt M. Veterinary Students’ Recollection Methods for Surgical Procedures: A Qualitative Study. J Vet Med Educ. 2016, 43(1):64-70.

JALAM教育委員会

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