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生殖細胞が持つポテンシャル -乾燥状態でも失われない受精能力-

大阪公立大学大学院獣医学研究科
金子 武人

はじめに

我々の研究室では、動物を中心とした受精メカニズムの解明、体外での受精技術の開発、細胞の長期保存法の開発、遺伝子改変動物の作製法の開発など生殖学に関連した多岐にわたる研究を行っています1。これまで、電気の力で細胞に穴をあけ遺伝子を細胞内に導入するエレクトロポレーション法を用いた遺伝子改変動物作製法(テイク法)の開発2-4、音波を用いて雌の妊娠環境を構築する方法(EGET)の開発5-7など、これまで用いられていた方法とは異なる新しい生殖技術の開発を行っています。

細胞の長期保存法の開発では、研究に用いられる動物の種や系統を生殖細胞である精子、卵子、そして受精卵の形で保存することで動物の利用を最小限にすることができます。精子、卵子、受精卵の保存で、最初に思い浮かべるのは液体窒素や冷凍庫で保存する凍結保存だと思います。ここでは、凍結保存とは異なる我々の研究室で開発したフリーズドライによる精子保存法について紹介したいと思います。

フリーズドライとは

「フリーズドライ」という言葉は聞いたことがあると思います。スーパーマーケットに行くとスープやコーヒーなどのラベルに書かれていることもあり、食品保存の分野ではよく用いられている技術です。フリーズドライは和訳すると凍結乾燥、つまり凍結してから乾燥させる技術です。水分を含んだサンプルを急速に凍結した後、真空状態にすることでサンプル中の水分を固体から気体へと昇華させながら乾燥状態にしていきます。フリーズドライ後のサンプルは、栄養成分や風味の劣化が少ないだけでなく、長期保存が可能になります。このことから、食品の保存だけでなく、医薬品の製造などにも利用されています。使用するときは、水を加えるだけで元の状態に戻すことができます。長期保存ができ、水分も少なく重量が軽くなるため非常食や携行食にも有効です。国際宇宙ステーションで活動する宇宙飛行士の食事(宇宙食)としても活用されています。フリーズドライ技術は、我々の生活のみならず、科学研究をも強力にサポートしているのです。

精子をフリーズドライ技術で保存する

 このフリーズドライ技術を用いて精子を乾燥させたらどうなるでしょうか。一度乾燥してしまった精子は受精する能力を失ってしまったように見えます。ですが、哺乳動物の多くの精子は、フリーズドライしても受精能力は維持されています。マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ウマ、ウシの精子はフリーズドライ後も受精能力が維持され、これらの精子と受精した卵子から正常な産子が誕生することが報告されています8-9

フリーズドライ保存は、凍結保存と何が違うのか。精子を凍結した場合は、保存するのに必ず液体窒素が必要になります。一方、フリーズドライした精子は、その保存に液体窒素は必要なく、冷蔵庫(4℃)での長期保存が可能です。「液体窒素不要の長期保存の実現」、これがフリーズドライ保存法の最大の利点です。そのほかにも、多くの利点があり表1に示してみました。

表1:フリーズドライ保存法と凍結保存法の比較

 フリーズドライ保存法凍結保存法
保存方法冷蔵庫(4℃)液体窒素保管容器(液体窒素)
保存液トリス-EDTAバッファー凍結保護物質
輸送方法常温・簡易包装液体窒素輸送器(ドライシッパー)
緊急時保存可能期間常温で3ヶ月2週間程度

液体窒素や電気などの供給が途絶した状況でサンプルを保存できる期間

液体窒素での凍結保存は、専用の液体窒素保管容器を用意し、さらに液体窒素は容器内で蒸発するため定期的に補充しなければなりません。液体窒素の補充は、重労働で酸欠を伴う危険な作業であるだけでなく、うっかり補充を忘れて液体窒素保管容器内の液体窒素を空にしてしまい、大事なサンプルを全滅させてしまったと言う話も聞きます。その点、冷蔵庫で長期保存できるフリーズドライ精子はそのような心配もなく、サンプルの国内外の施設間移動も容易にできます。実際に筆者は、日本-アメリカ間を簡易な包装で常温輸送したフリーズドライ精子から正常な産子の作出に成功しています10。これにより、生体で輸送することなく、簡易で安全に遺伝資源を移動させることが可能となりました。

震災や災害による貴重な研究生物試料の喪失

研究に用いられる生物試料は、様々な形で長期間保管されています。これらの中には、同じものを復元することが難しい貴重な試料も存在します。特に動物は、有効な形質を残す育種により長期間飼育されて現在に至っており、復元にも長い年月を要します。災害は、これまで蓄積してきた貴重な研究試料を一瞬で奪っていきます。近年は、気候変動により多くの地域で災害が起こっており、喪失の危険性は年々増加しているのが現状です。国内でも風水害による長期停電や浸水、地震による道路の寸断や建物崩壊が多くのところで起きています。液体窒素容器保管施設が地下に設置されている場合、大雨による浸水は致命的であり、地震により長期停電や液体窒素を補充できずに、ディープフリーザーや液体窒素保管容器で保存されていた貴重な研究試料の多くが失われたことも実際に国内外で報告されています。

筆者がフリーズドライ保存法の研究を始めた理由は、「インスタントコーヒーのように精子を保存しよう!」という知的好奇心でした。しかし、そのころ同時に大規模な自然災害が国内外で起きていたことから、その考えは安全な遺伝資源保存法としてフリーズドライ保存法を確立することに変わっていきました。表1に示した通り、フリーズドライ精子は冷蔵庫の電源が喪失しても3ヶ月程度は常温で保存できるため、試料さえ救出できれば簡易な梱包で安全な場所に移動させることが可能です。このことからも、フリーズドライ精子保存法は、これまでの液体窒素による凍結保存法と並行して、貴重な遺伝資源を安全に保存する上で極めて有効な方法であるといえます。

コラム

希少疾患の治療法開発と実験動物

信州大学基盤研究支援センター動物実験支援部門
吉沢 隆浩

 私達は様々な場面で薬を飲む。頭痛や風邪や花粉症など、薬を飲んで症状が和らいだ経験がある人は多いだろう。厚生労働省によれば、現在我が国では約1万3千品目の医療用医薬品が用いられている[1]。これらの医薬品は様々な病気の治療に幅広く対応し、私達の生活を支えている。その一方で、医療の発展した現代においても、治療法が確立されていない病気が数多く存在している。特に希少疾患は、そのうち95%の疾患で有効な治療法が確立されていないとされる[2]。一般的に希少疾患は、患者数が人口1万人当り1~5人未満の病気とされる。疾患ごとの患者数は少ないが、これまでに6千種類以上の希少疾患が報告され、世界全体の患者数は3億人以上と推定されている[3]。それぞれの希少疾患では患者数が少ないために、適切な診断が可能な医療機関が限られる、自然歴に関するデータの収集が難しい、研究に必要な人手や予算が集まりにくいなどの問題がある。さらに、古くから研究が進んでいる患者数が多い他の疾患と比べると、病気のメカニズム解明から治療法開発までを手探りで進める必要があるなど、全ての研究開発段階において困難を要するといった、希少疾患特有の課題がある。

 安全で効果的な医薬品を効率的に開発するためには、様々な解析手法の組み合わせが必要になる。治療薬開発(創薬)に取り組むためにまず必要なのは、臨床と基礎両方の視点から、病気の原因や発症および進行のメカニズム(病態メカニズム)を明らかにすることである。病態メカニズムの解明は、患者の診療データの収集から始まり、遺伝学的検査や培養細胞、疾患モデル動物を用いた解析など、多面的なアプローチがとられる。病態メカニズムが分かってきたら、次に、病気の原因や発症に関わる分子(治療標的分子)に作用する物質を探し出す作業(スクリーニング)が行われる。スクリーニングの対象になる物質は、低分子化合物、ペプチド、抗体、または核酸などがあり、治療標的分子に応じた様々な選択肢がある。低分子化合物での創薬の場合、莫大な数の化合物(化合物ライブラリ)から治療標的分子に作用する物質(ヒット化合物)を探し出す必要がある。そのため、まずはAIによるin silicoの解析でヒット化合物の構造式を予測し、スクリーニング対象を数千化合物程度に絞り込む場合が多い。次に、多種類の化合物を迅速に解析可能な、培養細胞などを用いたin vitroの方法でスクリーニングを行い、ヒット化合物を見つけ出す。ヒット化合物が見つかれば、その化学構造をヒントに構造最適化が行われるのが一般的である。次に、多くの場合では、実験動物を用いたin vivoでの安全性試験や薬理試験などが行われる。そして、これらの基礎研究~前臨床試験で積み重ねた知見を基に、健常者や患者への投薬実験(治験)が行われ、ヒトでの安全性と有効性が確認された物が、各種承認を経て患者の治療に使われるようになる。

 ここで少し話が逸れるが、in vivo試験の必要性について考えたい。私達の体は多種類の細胞によって構成され、さらに複数の臓器や組織が複雑に影響し合い協調することで、生命活動が維持されている。そのため、生きた体への病気や薬の影響は、生きた体でなければ分からないことが多い。その一例として薬物動態について考えると、薬の効きは消化管からの吸収率や、肝臓や腎臓での代謝や排泄、腸内細菌叢による影響、血液中のタンパク質への吸着、血管透過性、各種臓器への分布や蓄積など、全身の様々な要因の影響を受けることが知られている。また、病態メカニズムの解明やヒット化合物の安全性や効果の検証においても、病変が生じる臓器や細胞を解析するだけでは不十分で、全身にどのような影響があるのか包括的に評価する必要がある。また、多臓器連関として知られるような生体臓器同士の相互作用を慎重に解析し、病態メカニズムや薬の安全性・効果を俯瞰的に見極めることが求められる。そうしたことから、現時点で、病気の研究や治療法の開発に動物実験は欠かすことができない。

 さて、話を元に戻して、私の研究テーマについて紹介したい。前述の通り、創薬のスタートラインに立つためには、対象となる疾患の病態メカニズムの解明が必要になる。また、前臨床試験で薬の安全性や効き目を評価する手段も必要になる。そのためには、適切な疾患モデル動物が必要である。私は、日々試行錯誤しながら、希少疾患のモデル動物の研究に取り組んでいる。このコラムでは、筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群(mcEDS)と、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の疾患モデルマウスを用いた最近の研究について紹介したい。

コラム

最長寿齧歯類ハダカデバネズミの発がん・老化耐性機構の解明に向けて

熊本大学 大学院生命科学研究部 老化・健康長寿学講座
河村佳見

はじめに

キモかわいい動物として一部の層に人気を博しているハダカデバネズミ、皆さんは実際に見たことがあるでしょうか。上野動物園や埼玉県こども動物自然公園、最近私たちの研究室から個体を譲渡した熊本市動植物園などで見ることができます。体長8−10 cm、体重35 g程度と小柄で、両手で餌をもってかじったり、仰向けで眠ったり、見ていて飽きない多彩な行動をとるからでしょうか。実際にハダカデバネズミを見た多くの人は、写真や動画で見るよりかわいらしいと感じるようです。

そんなハダカデバネズミは近年、医学研究においても注目されるようになってきました。なぜならハダカデバネズミは、上述のように実験用マウスと同程度の大きさの小型齧歯類であるにも関わらず、最大寿命が40年と、体重から推定される5倍以上の長寿を誇るからです。しかも、その生存期間の大部分の間、老化の兆候を示さず、さらにこれまで、発がんがほとんど確認されていません。このような特徴から、老化やがんを含む様々な加齢性疾患の「予防法」の開発につながる新たな実験動物として、大きく注目を集めています。本稿では、ハダカデバネズミの特徴や発がん耐性・老化耐性に関与する最近の知見について、私たちの研究の成果を交えながら紹介します。

ハダカデバネズミとは

ハダカデバネズミ(図1左、デバ、英名naked mole-rat、学名 Heterocephalus glaber)はその名の通り無毛(完全に無毛ではなく、感覚毛がまばらに生えています)で、歯の突出したネズミです。デバは19世紀頃に初めて発見され、その見た目から当初は他の動物の赤ちゃんか、もしくは病気の動物ではないかと考えられたそうです1。分類上は齧歯目のヤマアラシ亜目デバネズミ上科のハダカデバネズミ科に属し、本種のみでハダカデバネズミ属を構成します。英名でラットと名前がついていますが、実験に用いられる齧歯類の中では、比較的モルモットに近い種です。野生ではアフリカの角(エチオピア・ケニア・ソマリア)と呼ばれる地域の乾燥地帯の地下にトンネルを掘り、アリの巣のような巣を作って住んでいます。住処だけでなく、その社会構造もアリに似ています。デバは哺乳類では極めて珍しい分業制の社会(真社会性)を作り(図1右)、数十から100匹以上の集団(コロニー)で生活しています2。1つのコロニーの中では1匹の女王と1−3匹の繁殖オスのみが繁殖し、その他のメンバー(女王と繁殖オスの子どもたち)は雌雄ともに性成熟が抑制されていて、働きデバとして餌集めやトンネル掘り、女王が生んだ子供の世話など様々な仕事を行います。女王は働きデバの性成熟を抑制していますが、そのメカニズムの詳細はまだよくわかっていません。女王から働きデバを隔離すると性成熟が開始すること、隔離した働きデバを女王の糞尿がついた床敷に曝露しても性成熟は抑制されないことなどから3、女王との物理的な接触(小突き行動などの攻撃的な接触)が重要ではないかと考えられています4

このようなデバの特殊な生態は、研究者たちの関心を集め、1970年代頃から地下性哺乳類の生態学的研究の一環として、実験室で飼育されるようになりました。その後、実験室での飼育によって、さらに驚くべき事実が明らかになりました。野生から捕獲されたデバが、20年を経過してもなお生存していたのです。さらに個体老化の指標として重要な加齢に伴う死亡率の上昇が認められず、加齢による各種生理機能(活動量・繁殖能力・心臓拡張機能・血管機能など)の低下もほとんど見られませんでした。加えて2000例以上の観察において腫瘍形成がほとんど認められないという、顕著な発がん耐性を示すことが判明しました5。このような老化やがんをはじめとする加齢性疾患耐性の分子メカニズムを解明することは、ヒトにおける老化やがんの予防方法の開発につながる可能性があるため、デバを用いた分子生物学的研究が近年盛んに行われるようになってきました。

デバ個体における発がん耐性メカニズム

観察研究によりデバの発がん耐性が明らかになって以来、そのメカニズムを解明するために、主に培養細胞を用いた研究が行われてきました。これまでに、デバの線維芽細胞にがん遺伝子である恒常活性化型Ras(HRAS-V12)およびSimian Virus 40 Large T(SV40LT)抗原を導入してがん化への形質転換を試みたところ、これらの細胞は形質転換に対して抵抗性を示し6、その耐性機構には高分子量ヒアルロン酸の存在が必要であることが報告されています7。一方で、近年では他の研究グループから、HRAS-V12とSV40LTの導入のみでデバ線維芽細胞ががん化形質転換するという、先行研究と異なる報告もなされており、デバの細胞がこのような遺伝子導入によるがん化誘導にどの程度耐性を持つのかについては現在も議論が続いています8,9

一方、デバの発がん耐性を評価するためには、自然発がんの発生率の観察や細胞レベルでの解析に加えて、生体内で実験的に発がんを誘導し、組織の応答を評価することが重要です。そこで私たちは、デバ個体に対して、発がん剤である3-メチルコラントレン(3-MC)または7,12-dimethylbenz[a]anthracene (DMBA)/ 12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate (TPA)を用いた、2種類の化学発がんモデルによるがん誘導実験を行いました10。その結果、マウスでは両方の誘導法において30週以内にすべての個体で腫瘍が形成されたのに対し、デバでは2年以上にわたる長期観察の中で、いずれの個体にも腫瘍の発生は認められませんでした。つまり、デバは化学的な発がん誘導に対しても極めて高い耐性を示すことが明らかとなりました。

発がんの過程では一般的に、DNA損傷や配列変異により変異細胞の出現(イニシエーション)が起こり、続いて免疫細胞の浸潤を伴う炎症の亢進などの組織微小環境の変化(プロモーション)が生じて発がんが促進されます。デバでは、発がん剤によるDNA損傷や細胞死は起こるものの、マウスと比べて免疫細胞の浸潤が少なく、炎症応答が弱まっていると考えられました。この炎症応答の減弱のメカニズムを解析するために、発がん誘導時の遺伝子発現変化をマウスとデバで比較しました。その結果、マウスでは“ネクロプトーシス”と呼ばれる細胞死を引き起こす遺伝子発現変化が生じていた一方で、デバではそのような変化は見られませんでした。ネクロプトーシスはプログラムされた細胞死の一種で、細胞膜の破裂とDNAなどの細胞内物質の放出を伴うため、強い炎症応答を引き起こします。デバでネクロプトーシス経路の活性化が見られない原因を探索したところ、ネクロプトーシスの制御遺伝子であるRIPK3およびMLKLにフレームシフト変異が生じており、ネクロプトーシスを誘導する機能を失っていることが判明しました。

そこで、マウスにおいてRipk3を阻害または欠損させ、3-MCによる発がん誘導を行ったところ、3-MC投与後の免疫細胞の浸潤が抑えられ、さらに腫瘍の発生も遅くなることが明らかとなりました。これらの結果から、デバにおけるネクロプトーシス誘導能の喪失は、発がんプロモーションとして働く炎症を抑えることで、発がん耐性の一因として機能していると考えられます(図2)。とはいえ、この変異のみではデバの強い発がん耐性を完全には再現できません。発がんの過程は、変異細胞とそれを取り巻く微小環境との相互作用によって進行すると考えられているため、未解明の発がん抑制機構を明らかにするには、今後さらに個体および組織レベルでの詳細な解析が重要となります。

コラム

遺伝子改変モデル動物の現在と展望

東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医学専攻 実験動物学研究室
藤井渉

遺伝子改変モデル動物

 実験動物は、ヒトの疾患の発症メカニズムの解明やその予防・治療法の開発に極めて重要な役割を果たしています。ヒト疾患の再現を目的として、様々な疾患モデル動物の開発が続けられており、基礎研究だけでなく応用研究や創薬開発など幅広い分野で利用されています。
 疾患モデル動物の中でも、遺伝子改変モデル動物は、疾患の発症メカニズムや遺伝的背景を解明するうえで欠かすことのできないツールです。遺伝子改変モデル動物とは、遺伝子改変技術を用いてゲノム配列情報を意図的に改変した動物を指します。遺伝子改変モデル動物には、外来遺伝子を挿入することで新たな性質を持たせる「トランスジェニック動物」、特定の遺伝子を削除することでその機能を失わせる「ノックアウト動物」、または特定の遺伝子領域を目的に応じて改変する「ノックイン動物」など、様々なタイプがあります。特に遺伝子ノックアウトは、その動物内で通常は機能している遺伝子を人為的に破壊してしまうことで、その遺伝子が体の中でどのような生理的役割を果たしているか、また疾患とはどのように関与しているか、などを調べるうえで非常に重要な手法です。例えば、ヒトのある疾患で機能不全が示唆されるような遺伝子をモデル動物で破壊することで、その遺伝子と疾患との因果関係を示すことができ、さらには、そのような動物を用いて、新たな治療法の開発を進めることができます。
 かつて、遺伝子ノックアウト動物を作製するためには「ジーンターゲティング法」と呼ばれる方法が一般的に使用されていました。この方法では、増殖可能でかつ個体発生も可能な多能性幹細胞などを用いて遺伝子を改変するというプロセスが必要でしたが、この改変効率は非常に低いものでした。さらには、改変された幹細胞から動物個体を作出し、交配を繰り返すことで全身に遺伝子改変が反映された動物を得ますが、このプロセスにも非常に多くの時間、労力、コストを要し、研究者にとって大きな負担となっていました。また、作製に必要となる動物の個体数が多いことも課題でした。

ゲノム編集技術の登場

 このような背景の中で革新的なブレイクスルーがもたらされました。それが「ゲノム編集技術」の登場です。この技術は、細胞が持つ自然なDNA損傷修復機構を巧妙に利用したものです。我々の体内では、紫外線、化学物質、ストレスなどの環境要因によってDNA損傷が日常的に発生していますが、細胞にはこの損傷を迅速に修復する仕組みが備わっています。ゲノム編集技術は、この修復過程を利用してゲノムDNAを改変する技術です(図1)。具体的には、特定の場所でDNAを切断する酵素を用います。この酵素がゲノム中の標的部位を認識し、切断を行うと、細胞はその損傷を修復しようとします。しかし、修復過程でエラーが生じることがあり、その結果として目的の座位のDNA配列に欠失や挿入などの変異が起こり、もとの配列から変化してしまう、という仕組みを利用します。ゲノム編集を遺伝子がコードされている場所に利用すれば、変異によって遺伝子を壊すことができるため、特定の遺伝子の高効率なノックアウトが可能となりました。

図1. ゲノム編集

ゲノム編集技術は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc Finger Nuclease, ZFN)と呼ばれるDNA切断酵素の開発によって注目されるようになりました。この酵素は、DNAを認識するタンパク質ドメインのジンクフィンガーとDNAを切断する酵素を融合させたもので、ジンクフィンガー部分を特定の配列に結合するよう設計することで、ゲノムDNAの狙った部位を切断し、変異を導入できるようになりました。同様に、DNA結合タンパク質であるTALエフェクターとDNA切断酵素を組み合わせたTALEN(Transcription Activator-Like Effector Nuclease)も開発され、広く利用されてきました。一方、2013年には新たなゲノム編集ツールとしてCRISPR/Cas9システムが発表されました。このシステムでは、DNAを認識する部分が、ZFNやTALENのようなタンパク質ではなく、ガイドRNA(gRNA)と呼ばれる短いRNA分子によって構成されています。そのため、標的配列に合わせた設計が容易で、従来の方法に比べて手間をかけずに利用できるようになりました。ゲノム編集技術の研究は急速に進展しており、遺伝子改変動物の作製プロセスは劇的に効率化されました。従来のジーンターゲティング法で必要とされた幹細胞は使わずに、受精卵内で直接遺伝子改変を行えるようになり、個体化に必要なステップや動物の個体数を大幅に削減できるようになりました。3R(Replacement, Reduction, Refinement)の原則の理念にも適合する方法としても注目されています。マウスモデルでは、限られた機器と技術で遺伝子改変個体を作出できる方法も報告されており、これまで遺伝子改変研究に参入してこなかった研究者にも門戸が開かれつつあります。

コラム

動物の大きさに関する研究と実験動物

山口大学共同獣医学部発生学・実験動物学研究室
加納 聖

1. はじめに

動物の大きさはどのようなメカニズムで決まっているのでしょうか?

動物の体の大きさを決定するメカニズムは、未だ解明されていない魅力的な生物学的課題です。実験動物としてのほ乳動物においても、マウスのような小型の種からサルなどの霊長類まで、体の大きさには多様性が存在します。また、マウスの系統間でも顕著な大きさの違いがみられます。これらの大きさの違いは一体どのようなしくみで決まっているのでしょうか?

組織レベルで見ると、ほ乳動物の細胞1個のサイズは動物種による顕著な差はほとんどみられません。では、個体の大きさは体を構成する細胞数によって決まるようにも思えますが、その実態は想像するより複雑なようです。

「THE CELL 細胞の分子生物学 第6版」(1)には、「器官および個体の大きさは全体として恒常的に制御されており、重大な外的ストレスが加わっても適切なサイズを感知し、成長や縮小に関するシグナル伝達を調整する能力を有している」と記されています。すなわち、動物の体や器官の大きさは、器官あるいは体の大きさと細胞数の組合せによって、総合的に決定されると考えられています。

このようなシンプルかつ包括的な動物の体の大きさを制御するメカニズムの全貌を明らかにするには、様々な角度からの研究が求められます。実際にこれまで、多様な矮小マウスモデルを用いて、動物のサイズに関する研究が進められてきました。本稿では、私たちが変異マウスを用いて行った、動物の体の大きさに関する研究の一端を紹介したいと思います。

2. 矮小変異マウスを用いた解析

矮小化に関与する遺伝的変異は、成長が不十分とされる矮小マウスにおいてこれまで同定されています。矮小マウスの代表例であるSnellマウス(dw)(2-4)、Amesマウス(df)(4-6)、およびlittleマウス(lit)(4, 7)は、いずれも成長ホルモン(Gh: Growth Hormone)を中心とする、成長に関わる内分泌系の変化に起因する古典的な矮小モデルマウスです。もちろん、マウスに矮小の表現型をもたらすものは、それらの内分泌系を調節する下垂体や視床下部の機能の異常だけではなく、その他の内分泌機構の異常や遺伝的要因によっても引き起こされます。たとえば、染色体結合タンパク質のグループhigh-mobility group(HMG)DNA結合タンパク質の1つであるhmga2遺伝子の変異によるpygmy(pg)(8-13)や、iscoidin Domain受容体2(DDR2)遺伝子の変異によるsmallie(slie)(14)など、トランスジェニックマウスの作出過程で生じた、DNA断片の挿入変異による自然発生的な矮小マウスも確認されています。

さらに近年、N-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)を用いた変異誘発による表現型誘発マウスが注目を集めています(15)。遺伝子地図やDNAサテライトマーカーなどを用いて、特定の表現型の原因遺伝子の塩基配列を特定する方法であるポジショナルクローニングを含むフォワードジェネティックススクリーニング(図1, 2)は、私たちが知りたい体の大きさなどを決定づける因子の複雑な関係性を明らかにするため、表現型と関連する生物学的経路や遺伝的要素を同定するための有力な手段です。本稿では、これらの例として、私たちが解析した2つの矮小マウスモデルSmallie(slie)マウスとfertile peewee(fpw)マウスについて紹介します。

コラム

実験動物としてのウサギ

自然科学研究機構
西島 和俊

皆さんが一度は接したことがあると思われるカイウサギ(英名:rabbit, 学名:Oryctolagus cuniculus)は、元はイベリア半島の地中海沿岸地域に生息していた野生のアナウサギが家畜化されたもので、全世界に広まり、食肉用、毛皮用、愛玩用、観賞用等の多くの品種が作られてきました。欧州等では、ウサギは現在でも食用として一般的に利用されていますが(高蛋白、低脂肪!)、日本においては一部の食肉文化が残る地域(秋田県大仙市周辺)を除いては、愛玩用としての需要が大部分を占めます。ちなみに、日本にも生息するノウサギ(英名:hare, 学名:Lepus brachyurus)はウサギ亜科のアナウサギとは別属の動物で、生態、身体的特徴や染色体数も異なり、両者は交配しないことが知られています。

カイウサギは、実験動物としても古くから利用されてきました。19世紀の後半に、近代細菌学の開祖と呼ばれるルイ・パスツールは、狂犬病に罹ったイヌの脳をすりつぶし、その乳剤をウサギの脳に接種して病原体(ウイルス:当時は“ウイルス”の存在が明らかにされていない)を継代【注1】しました。継代した病原体(弱毒狂犬病ウイルス)をウサギの脊髄に感染させ、その脊髄を乾燥させてすりつぶしたものを乳剤にして人の発症予防に使用しました。これが世界初の狂犬病ワクチンとなります。同じく近代細菌学の開祖とされるロベルト・コッホも1905年にノーベル生理医学賞の受賞業績である結核菌の研究でウサギを用いました。化学療法の創始者といわれるパウル・エールリッヒの下で研究を行った秦佐八郎は、ウサギの陰嚢で継代できる梅毒スピロヘータを用いて実験を重ね、ある砒素化合物(サルバルサン)をウサギの耳介静脈に注射すると陰嚢の潰瘍が改善し、梅毒スペロヘータが消えることを発見しました。サルバルサンは合成物質による世界最初の化学療法剤としてドイツのヘキスト社から市販されました。

このように、ウサギは感染症研究の発展に大きく寄与すると同時に、1890年にはウォルター・ヘップにより、哺乳動物における最初の胚移植の成功例がウサギで報告されるなど[1]、その扱いやすさから様々な動物実験に使用されてきました。近年は、小型で飼育・実験コストが低い、繁殖能が高い、世代交代が早い、微生物学的コントロールの技術が普及している、遺伝・育種学、発生工学技術【注2】が発展している等の理由により、多くの研究領域で小型げっ歯類(マウス、ラット)が実験モデルとして用いられています。実験動物としてのウサギには、マウスに比べると大型で飼育・実験コストが高い、発生工学技術の開発が遅れている、利用できる解析キット・抗体(ウサギを用いて特異抗体を作製することが多い)が少ない等の難点があります。しかし、手ごろな大きさであるため外科処置がしやすい、十分な生物サンプルが採取できる等の利点に加え、ゲノムが解読され、ゲノム編集技術の発達により遺伝子欠損個体が作出できるようになった、オミックス解析【注3】などの解析技術が進歩した等により、ウサギを用いた実験における難点が克服されつつあります。

現在、研究に用いられるウサギの品種としては、アルビノ【注4】の日本白色(JW:Japanese White)やニュージーランド白色(NZW:New Zealand White)、有色のダッチ(Dutch-belted)などが一般的です。JWは、日本でNZWにいくつかの品種を掛け合わせて作出されたと考えられており、国内では実験動物として一般的に使用されますが、世界的にはNZWが広く使用されています。ダッチは病気に強いといわれており、体重が1.5~2 ㎏程度の小型(JW、NZWは3~4 ㎏程度)であることや有色であることが利点となる場合に選択されます。また、大型の実験用アルビノウサギも開発されており、イヌなどに代わる実験モデル動物となることが期待されています[2]。

コラム

アジアの国々における実験動物獣医師と日本実験動物医学専門医協会(JCLAM)

花井幸次
島根大学 実験動物部門, JCLAM国際渉外委員会委員(IACLAM担当), IACLAM理事(前Secretary/Treasurer) 

科学の進歩のために多くの国で動物実験が行われています。たとえ人間の生活をよりよくするという目的のためであっても、実験動物を命あるものと理解し、福祉的・倫理的、かつ、科学的にも適切に使用・飼養しなくてはならないことは、現在では疑いのないことです。そして、それを達成するために、実験動物の使用・飼養は、実験動物獣医師の責任の下に行われる必要があると世界的に考えられています(関連したコラム「JCLAMが果たす国際貢献」を参照してください)。こうした要求に応えるために日本では日本実験動物医学会(JALAM)と日本実験動物医学専門医協会(JCLAM)が協力して努力してきました。しかしながら、今なお日本では実験動物獣医師の重要性について、多くの人に十分に理解されていないように感じられます。
 2023年9月にAsian Federation of Laboratory Animal Science Associations (AFLAS:アジアの国々の実験動物学会の連合会)の学会が韓国の済州島で開催され、その中で韓国の実験動物医学専門医協会(KCLAM)が共催するシンポジウム「アジアの国々における実験動物獣医師の役割」が行われました。このセッションには、日本を含む11の国と地域から実験動物獣医師の代表者が集まり、各国の動物実験や実験動物の使用・飼養に関する法令や国の指針、それらに記載された実験動物獣医師の役割、実験動物獣医師の研修制度などについてラウンドテーブルとして議論が行われました。この貴重な機会に、私はJCLAMの代表者として参加させていただきました。これからの日本の実験動物に関する規制や管理のあり方、そしてJALAM/JCLAMの活動を検討するための資料として、更に動物実験に関心のある一般の方に世界の現状を知っていただく機会として、このセッションでの議論の内容を簡単に紹介いたします。(なお、このコラムは、2023年12月にJALAM/JCLAM ウェブセミナーで、会員限定で紹介した内容を一般の方向けに紹介するものです。)

1)参加国
 下表にラウンドテーブルに参加した団体とその所属する国と地域を示しました。11の国と地域の内、日本、韓国、インド、フィリピンの代表者は実験動物医学専門医協会からの参加でした。それらの協会はいずれも「実験動物医学専門医を通じて、世界中で実験動物獣医師の役割を広げ、それにより実験動物の福祉と健康を向上させる」ことを目的に活動を行っているIACLAM (The International Association of Colleges of Laboratory Animal Medicine)のメンバー協会です。台湾からも実験動物医学専門医協会(TCLAM)の代表者が参加しましたが、この団体は2023年に立ち上げられ、学会開催時には米国の実験動物医学専門医協会(ACLAM)のサポートを受けて活動準備中とのことで、まだ台湾には専門医制度は整備されていませんでした。インドネシアからは実験動物獣医師団体であるILAVA(Indonesian Laboratory Animal Veterinarians Association)の代表者が参加しました。この組織は、インドネシアの獣医学会の下部組織で、日本のJALAMに近い組織です。そのほかの参加国には、実験動物獣医師の団体はなく、各国の実験動物学会で獣医学的ケアに関する諸問題を取り扱っているとのことでした。以下、理解しやすくするために団体名の代わりに国や地域名を使用して説明します。
 今回参加した国や地域では、実験動物の適切な使用・飼養に関して、上記の台湾の他にも欧米の考え方・システムを取り入れている、あるいは参考にしているところが多いことが窺われました。IACLAMメンバー4か国と台湾以外の6か国の組織のうち、ACLAMの認定専門医が活動の中心にいるのは4か国(中国、シンガポール、インドネシア、タイ)で、そのうち3か国(中国、タイ、シンガポール)は米国実験動物学会(AALAS)のGlobal Affiliate Memberになっています。また、タイとマレーシアはAALAS研修制度を自国の実験動物獣医師の研修として利用しています。スリランカの活動の中心人物は欧州の実験動物学会(FELASA)の実験動物科学のスペシャリスト認定を受けているとのことでした。

2)各国の法令・指針における実験動物獣医師
 参加した団体のすべての国と地域で実験動物の適切な使用・飼養に関する法令あるいは国の指針が整備されていることが示されました。また、ほとんどの国と地域で法令又は国の指針として実験動物獣医師の関与や役割を定めており、定められていないのは日本とスリランカだけのようでした。タイやシンガポールでは、動物実験施設は必ず獣医師を設置しなくてはならないと法令で定めています。しかし、いずれの国あるいは地域も実験動物獣医師の人数が十分というわけではないので、獣医師の存在が法令により必須と規定されたタイやシンガポールのほかは、条件によって必ずしも実験動物獣医師が存在しなくとも動物実験は行えるようです。例えば、動物実験施設の規模や扱う動物種によって扱いを変えるような事例も紹介されました。
 シンガポールには獣医師の養成を行う大学がなく、海外からの獣医師に頼った運用ですが、動物実験施設は登録制で実験動物獣医師が必須であるため、パートタイムでいくつもの施設を受け持つ方もいるようです。

3)日本(JCLAM)の指導力への期待
 JCLAMは、IACLAMの設立メンバーで韓国(KCLAM)とともに実験動物医学専門医の組織として長年活動しており経験が豊富です。また、IACLAMメンバーの中でも米国(ACLAM)に次いで実験動物医学専門医の資格を有する実験動物獣医師が多くいます(2023年12月現在;欧州全体よりも多い)。また、日本では世界の中でもトップクラスと言えるほど動物実験が多く実施されています(Addict Biol. 2021; 26(6): e12991)。こうした背景からと思われますが、今回、日本の動物実験に関する現状やJCLAMの紹介を行った後、多くの質問や期待を示すコメントがあり、アジアの国々で実験動物獣医師が一層活躍できる環境づくりに、日本やJCLAMが期待されていると感じました。特に、実験動物獣医師の技能レベルの向上・研修制度は各国の課題となっており、KCLAMやJCLAMを中心として今回参加した団体が協力して相互に向上できる仕組みが得られればとの意見もありました。
 国際的には、国際獣疫事務局(WOAH; World Organization for Animal Health)の Terrestrial Code, Chapter 7.8や米国ILAR guide (第8版)など主要な指針や規則として、「動物実験施設における実験動物の福祉・健康に関して責任を有するのは獣医師である」とされています。上述のとおり、今回のほとんどの参加国でこの要求に準拠した法令や指針が作成されていました。一方、日本は多くの国と異なり、法令や国の指針として動物実験施設に獣医師が必要とは明記されておらず、その代わりに「実験動物に関して優れた識見を有する者」を動物実験委員会の委員とすること、および実験動物管理者を設置することが必要とされています。今回のセッションでは、この日本の仕組みにも関心が寄せられました。獣医師の数が十分でない中で、動物実験施設で必要とされる獣医学的ケアを満たす方法としてよい一例として受け止めてもらえたようです。
 動物実験の成果を一定のレベルで達成するためには、世界的に認められた基準で実験動物を飼養し、適切な方法で動物実験を実施する必要があります。しかしその一方で、動物実験の管理についても各国の文化・歴史的背景を考慮した独自性を尊重することは重要で、全てを米国のスタイルに統一させる必要はないと思われます。こうした考えからも日本の仕組みに共感を得たのかもしれません。
 とは言え、今の日本の法令や指針では、先に述べたような国際的な獣医師への期待・要求に応えられていません。今後日本が国際社会の中で「適切な動物実験を実施している」と認め続けてもらうために、そしてアジアや世界のリーダーとして日本型システムを示し続けていくためにも、日本の法令や国の指針の中に実験動物獣医師の定義と役割について明記するとともに、現在の仕組みを昇華させていく必要があると考えられました。そしてJALAMやJCLAMはその仕組みにふさわしい高いレベルの実験動物獣医師を育成し、行政とも協力して日本型システムの完成度を高めていく原動力になるべきと考えます。

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