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シンガポールにおける動物研究施設の運用
【NACLAR Guidelines: Training】
本セクションでは、実験従事者、ケアテーカー、獣医、IACUCメンバーなど役割に応じて、必須もしくは推奨されるトレーニングが細かく定められております。細かい部分は機会がありましたらガイドライン自体を見ていただきたいのですが、ここでは特に重要度の高いResponsible Care and Use of Laboratory Animals Course (通称RCULAC) とSALAS Basic IACUC Trainingについて取り上げます。
RCULACはNParks/AVSが認定した施設から提供されるトレーニングで、多くの役割に対して必須という位置づけになっています。動物実験に関する法律・倫理・手技等の基礎を学ぶ研修で、座学パートと実際に動物を使用する手技パートで構成されており、手技パートは動物種ごとにコースが分かれています。座学パートは試験をパスすることで、手技パートは実習を完了することで受講証が発行され、それぞれの役割に従事できるようになります。座学パートはかなり細かい部分までNACLAR Guidelinesを理解する必要があったため、英語というハンデも加わり、試験に合格するか、とても緊張したのを覚えています。
2022年の改訂から座学は5年ごとrefresher courseの受講を、手技は2年以上のブランクがあれば再受講を推奨する、という文言が加わり、認定施設からもrefresherに合わせたトレーニングの提供が開始されました。
SALAS Basic IACUC Trainingは、NParks/AVSが認定したSALASという機関から提供されるトレーニングプログラムです。ガイドラインでは半数以上のIACUC委員が、IACUCに関する正式なトレーニングを受講することを義務付けており、SALAS Basic IACUC Trainingはガイドライン中にも紹介されている、シンガポールで最もメジャーなトレーニングという位置づけです。IACUCの運営に特化した内容で、前半に法規制・研究倫理・動物施設運用を学ぶ座学パートを受講したのち、後半では5-6人のグループに分かれた模擬IACUC委員会を行うという二部構成となっています。模擬IACUC委員会では、AVSの方や有識者が議長となり、事前に用意された研究計画書をもとに議論を実施します。
実際に私が参加した際は、議長から「研究目的と実験方法が合致していると思う?」「3Rsがちゃんと考えられている?」「使用匹数の計算は適切?」といった点について矢継ぎ早に意見を求められた他、「あなたなら実験従事者に対してどのような確認をする?そしてその意図は?」といった形の問いかけもあり、「IACUCとして重要なポイントは何か」を学ぶだけでなく、「自分で考える力」の育成も重視しているのだと感じました(その分、トレーニングはタフでしたが・・・)。また議長より、「科学者だけでなく、一般の人々も理解・納得できるか、という視点を忘れないように」というアドバイスもいただきました。
【NACLAR Guidelines: Occupational Health and Safety】
従事者の安全を守るために、Occupational Health and Safetyについて、改訂前のガイドラインでも触れられておりましたが、2022年の改訂より1つのセクションとして独立しました。本セクションでは、全ての動物研究施設においてoccupational health and safety program (OHSP) の確立・維持を義務付けており、OHSPについての具体的な項目と考慮すべき点が定められています。OHSPの例として、以下が挙げられています。 危険源の特定とリスクアセスメントの実施と、特定したリスクの低減策の実施事故発生時の報告ルートの確立緊急時の対応プランの確立従事者の健康チェックと予防措置の実施施設や設備の設計及びモニタリングを通した安全策の実施
いずれの項目も、動物研究施設に限らず、職場の安全性を確保するために当たり前のことですが、明文化することで抜け漏れなく対応することが容易になりました。またガイドラインは動物施設の関係者だけではなく、安全衛生や研究倫理等に関わる様々な部門と協働することを求めており、より効果的なOHSPの確立を意識した内容となっています。
【さいごに】
以上、簡単にシンガポールの動物研究施設の運用について紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 当然日本と共通するところもありますが、少し違った部分もあったかと思います。本コラムが、動物福祉や動物研究施設の運用を考えるうえで、少しでも参考になりましたら幸いです。
<参考>
Animals and Birds Act 1965 (2020 Revised edition), https://sso.agc.gov.sg/Act/ABA1965 (Accessed: 27 October 2023).
Animals and Birds (Care and Use of Animals for Scientific Purposes) Rules (2007 Revised Edition), https://sso.agc.gov.sg/SL/ABA1965-R10 (Accessed: 27 October 2023).
Guidelines on the Care and Use of Animals for Scientific Purposes Second Edition 2022, https://www.nparks.gov.sg/-/media/naclar-guidelines-(second-edition)_v2.ashx (Accessed: 27 October 2023).
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蚊のぬれに着目した新しい蚊対策
まず蚊の脚をよく見てみます。細かいうろこがびっしりと付いています(図1A)。しかもこのうろこひとつひとつが、水をはじく成分で覆われています。つまり蚊の脚は、成分的にも構造的にも、よく水をはじくのです。そのため蚊は、水に降り立つことができるし、水辺に卵を産むこともできます。それでは、この脚が水をはじけないようにすればよいのではないのでしょうか?そこでシリコーンオイルです。蚊の脚のうろこをたくさん集めて、うろこじゅうたんを作ります。その上に、水とシリコーンオイルをたらしてみます。そうすると水は丸い液滴になってはじかれるのに対し、シリコーンオイルは蚊の脚になじんで、ぬれ広がっていきます(図1B)。先ほど蚊が降り立つことができた表面にシリコーンオイルを塗布すると、0.07秒という短い間に飛び去っていくことがわかりました(動画2)。このとき蚊は何を思って逃げていくのでしょうか?シリコーンオイルに触れたときに脚にかかる力を測りました(図1C)。水に近い性質の液体、グリセリンに脚をつけると、脚には反発する力が働きます。一方で、シリコーンオイルに脚をつけると、脚には引き込まれる力が働くことがわかりました。その力はなんと、蚊の体重の80%でした。60キロの人が、いきなり泥沼にはまり、かつ48キロの力で引っ張られるところを想像してみます。たしかにものすごく嫌ですね。実際に肌にシリコーンオイルを塗っても、蚊は肌にとまりませんでした(動画3)。

図1:蚊の脚におけるシリコーンオイルの作用。
A) 蚊の前脚の電子顕微鏡写真。B) 蚊の脚から集めたうろこに水(上)とシリコーンオイル(下)を滴下した様子。C) グリセリン(◆)とシリコーンオイル(●)に蚊の脚を浸漬したときに蚊の脚が受ける力。
動画2:シリコーンオイルによる降着忌避
動画3:シリコーンオイルを塗布した肌に蚊がとまらない様子
コラム 蚊の退治法

老化研究と実験動物
3.老化細胞除去薬(Senolytics drug)とは?
現在開発途上の老化細胞除去薬の一例として、ダサチニブとケルセチンという薬剤をご紹介します。ダサシチニブとケルセチンはいずれも老化細胞を選択的に除去する作用を有しており、この2種類の薬を併用することで老化細胞のアポトーシス抑制機構を抑制します(つまり、老化細胞のアポトーシスを促進します)。実際に、この薬をマウスに投与した実験では脂肪肝の減少(13)、肺線維症の改善(14)、アルツハイマーモデルの脳における神経原線維変化が軽減されました(15)。加えて、自然老化マウスの運動機能の改善や寿命の延長、ヒト由来の脂肪細胞からのSASP因子の分泌抑制(16)などの効果も確認されており、ヒトへの臨床応用も検討されています(17)。
4.老化研究に用いられる実験動物
ヒトの老化研究はBLSA(Baltimore Longitudinal Study of Aging) が最古の研究とされており、加齢に伴う代謝機能不全や血液学的変化、歩行速度の低下、認知機能低下といった知見を与えてきました。ですがヒトの平均寿命は80年を超えていることから、研究には長期的な期間を要する上、それに伴い多大なコストを要するといった問題や、検体のサンプリングの制限など大きな制約をいくつも抱えています。
このような問題から、出芽酵母、線虫、ショウジョウバエの老化モデルが用いられてきましたが、ヒトの老化で見られる免疫系や各臓器の老化、痴呆症などの脳神経疾患などを評価するためには、哺乳類モデルが必要不可欠です。非ヒト霊長類を用いたカロリー制限の研究は記憶に新しいと思いますが、非ヒト霊長類の老化研究も非常に時間がかかる研究です(18)。一方、げっ歯類は世代が短く、寿命が比較的短く、取り扱いや飼育に便利であることから、老化研究における哺乳類モデルとして最も使用されております。現在まで、マウスを用いて、寿命に影響を与える様々な因子が検討され、活性酸素除去(19)やテロメア長は寿命に与える効果が不明であり(20)、サーチュイン活性化(21)、メトホルミン投与(22)、mTORC1阻害(23)、GH/IGF-1シグナルの抑制(24)などは、マウスに対して延長効果があることが報告されております。老化は、このような様々な生命現象が複合的に折り重なって起こる現象であるようです。こうした老化の機序や治療研究には、遺伝子改変マウスに加え、自然老化したマウスや早老症のモデルマウスが大きく貢献してきました。しかしながら、老化におけるマウスとヒトの相似性と相違性は未だ不明であり、マウスの標準的な老化を包括的に理解する必要が生じてきました。つまり、ヒトへの外挿性について検討が必要となっている状況です。

[学会情報]日本動物実験代替法学会第 36 回大会開催のご案内
日本実験動物医学会が後援している日本代替法学会が下記の日程で開催されます。JALAM会員は、代替法学会会員価格で大会に参加できますので、ぜひご参加下さい。
大会長 伊藤 晃成(千葉大学大学院薬学研究院)
開催日:2023 年 11 月 27 日(月)〜29 日(水)
会場:千葉大学 西千葉キャンパス(千葉市稲毛区弥生町 1-33)
テーマ: 動物実験代替法の終わりなき挑戦
ホームページ:https://jsaae36.secand.net/index.html
大会事務局:日本実験動物代替法学会第 36 回大会事務局
千葉大学大学院薬学研究院 生物薬剤学研究室
〒260-8675 千葉市中央区亥鼻 1-8-1
TEL: 043-226-2887、FAX: 043-226-2887
E-mail: jsaae36@gmail.com
運営事務局: 株式会社 JBE
〒140-0004 東京都品川区南品川三丁目6番地51号 NK南品川301
TEL: 03-6718-4952、FAX: 03-6718-4952
E-mail: jsaae36@jbe.co.j
コラム

第31回サル疾病ワークショップ参加者募集中
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第31回サル疾病ワークショップ
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マーモセットを用いた医学生命科学研究の現場から
【開催日】 2023年7月29日(土)
【開催形式】 ハイブリッド
• 会場 実験動物中央研究所 レクチャールーム
神奈川県川崎市川崎区殿町3丁目25-12
• オンライン zoom
■□ 第31回サル疾病ワークショップ参加者募集
締切: 2023/07/07
事前登録が必要です。
添付のプログラムをご参照の上,お申し込み下さい。
■□ 詳細,参加申込,発表申込,お問い合わせ
https://www.spdp.jp/2023/04/-2023/
【参加費用】
• 参加費 3,000円
• 昼食弁当代 1,000円 (希望者・現地会場のみ)
• 懇親会費 5,000円 (希望者・現地開催)
※事前のお支払いが必要です
【大会長】井上 貴史 (実験動物中央研究所)
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