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ミネラル調節ホルモン「スタニオカルシン-1」:変わらずに変わった変わり者?

コラム

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山梨大学総合分析実験センター 准教授 兼平雅彦

I. はじめに

“ミネラル調節”と聞いて、皆さんはどんなイメージをもつでしょうか?「熱中症予防には水ではなくスポーツドリンクが有効」「加齢、運動不足等で骨が脆くなる」等々。魚類ではどうでしょうか?海水には淡水に比べ、ナトリウムやマグネシウムなどの大量のミネラルが存在するため、海水魚と淡水魚の生育環境は著しく異なります。しかし、料理に用いる調味料の量はだいたい同じです(全く違うというプロの意見もあるかもしれませんが・・・)。高校生物の知識を思い起こすと、淡水魚は、鰓で水中の塩類を積極的に吸収し、低張な尿を大量に排泄することで、体液中の塩類濃度を外部環境より高く保っています。一方、海水魚は、海水を大量に飲みこみ、水分を腸から吸収しつつ、過剰な塩類を鰓から積極的に排出し、かつ等張の尿を少量排泄することで、体液の塩類濃度を外部環境より低く保っています。ここではミネラルの一元素カルシウムを中心に話を進めますが、魚類、特に海水魚は、飲水から常時カルシウムが体内に流入しますので、常に血中カルシウム濃度が高値になる恐れがあります。一方、主に陸上で生活する爬虫類、鳥類、哺乳類は、摂餌によりカルシウムを腸管から吸収し、リン酸カルシウムの形で骨に貯蔵して必要に応じて利用します。すなわち、血中カルシウム濃度に関しては、魚類、特に海水魚は「下げる」メカニズム、爬虫類、鳥類、哺乳類は「上げる」メカニズムが重要といえます(以下、本稿では魚類と哺乳類に限って話を進めます)。魚類の血中カルシウム濃度を下げるホルモンとしてスタニオカルシン-1が知られていますが、哺乳類では同じスタニオカルシン-1が全く別の働きをしています(図1)。本コラムでは、姿形を変えずに、役割を変えることで生き残った不思議な分子、スタニオカルシン-1について紹介します。

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JALAM学術集会委員会

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