文献紹介:フィンランドにおける実験用ビーグルの最初のリホーミング:社会化訓練からフォローアップまでの完全なプロセス
リホーミングは実験動物の余生を考える素晴らしい方法ではありますし、著者らもリホーミングを推奨してはいますが、この文献では課題として憂慮されるプロセスも赤裸々に示されており、安易に進めることがまた新たな問題を生じさせてしまう可能性も示唆されます。リホーミングにおいては各動物種に最適な方法を慎重に選択することが必要でしょう。ある意味リホーミングではなくとも、残された1頭のように、実験施設や研究者自身が最初の飼養者としての責任を持ち、アニマルサンクチュアリのように実験施設や自宅での終生飼育を考えるといったことも実験動物の余生を考える選択肢の一つとなるようにも思います。
また 大変興味深いことに、今回リホーミングの対象となった認知研究について、著者らはビーグルを用いて実施していた実験法を家庭犬に用いることで、その後実験用ビーグルの必要性がなくなったと報告していました。動物実験とは通常実験動物を用いて行われるものではありますが、実験法を確立した後の実験には実験動物が必要なくなったということです。こうした動物実験の代替の可能性もあるのかもしれません。
もちろん研究対象は目的に拠るものですが、実際に動物用医薬品の開発でも医薬品の開発でも、ボランティアによる治験や臨床試験が行われます。動物実験とは実験動物を用いて実験をするという側面だけではなく、動物のことを研究して理解を深めてゆくことでもあります。動物の余生についても研究を重ね、多様な選択肢の中で考えを巡らせてみることは、改めて社会として適切な動物実験を実施するとは何かということを考える材料にもなるかもしれません。
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実験動物のリホーミング
最近では、酪農学園大学から引き取られた実験犬「しょうゆ」の里親譲渡の話題もあり、こちらも「実験動物の里親制度」についてのコラムですでに紹介されていますが、国内でも少なからず実験動物を安楽死せずに余生を送らせるリホーミングの活動が行われています。リホーミングは動物の福祉を考えること、また実施者の心理的負担を軽減させるという点でとても有意義なことではありますが、同時に、実験動物が社会の目に触れ、動物実験に関心をもつきっかけとなるということは、社会的に適正な動物実験を考える上でもとても重要なことでもあるのではないでしょうか。
ここでは実験動物のエンドポイントとして安楽死に代わる選択肢としての可能性があるリホーミングについて、実際にリホーミングをされた方からの寄稿を交えて、文献を紹介します。多くの方が実験動物に関心を持ち、適正な動物実験を考えるきっかけとなればと思います。
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