logo

当サイトではサービス向上のためにCookieを取得します。同意いただける場合は、「同意する」ボタンをクリックしてください。
詳細は、Cookieポリシーのページをご覧ください。

蚊のぬれに着目した新しい蚊対策

コラム

1 2 3 4 5 6 7 8



 まず蚊の脚をよく見てみます。細かいうろこがびっしりと付いています(図1A)。しかもこのうろこひとつひとつが、水をはじく成分で覆われています。つまり蚊の脚は、成分的にも構造的にも、よく水をはじくのです。そのため蚊は、水に降り立つことができるし、水辺に卵を産むこともできます。それでは、この脚が水をはじけないようにすればよいのではないのでしょうか?そこでシリコーンオイルです。蚊の脚のうろこをたくさん集めて、うろこじゅうたんを作ります。その上に、水とシリコーンオイルをたらしてみます。そうすると水は丸い液滴になってはじかれるのに対し、シリコーンオイルは蚊の脚になじんで、ぬれ広がっていきます(図1B)。先ほど蚊が降り立つことができた表面にシリコーンオイルを塗布すると、0.07秒という短い間に飛び去っていくことがわかりました(動画2)。このとき蚊は何を思って逃げていくのでしょうか?シリコーンオイルに触れたときに脚にかかる力を測りました(図1C)。水に近い性質の液体、グリセリンに脚をつけると、脚には反発する力が働きます。一方で、シリコーンオイルに脚をつけると、脚には引き込まれる力が働くことがわかりました。その力はなんと、蚊の体重の80%でした。60キロの人が、いきなり泥沼にはまり、かつ48キロの力で引っ張られるところを想像してみます。たしかにものすごく嫌ですね。実際に肌にシリコーンオイルを塗っても、蚊は肌にとまりませんでした(動画3)。

図1:蚊の脚におけるシリコーンオイルの作用。

A) 蚊の前脚の電子顕微鏡写真。B) 蚊の脚から集めたうろこに水(上)とシリコーンオイル(下)を滴下した様子。C) グリセリン(◆)とシリコーンオイル(●)に蚊の脚を浸漬したときに蚊の脚が受ける力。

動画2:シリコーンオイルによる降着忌避

動画3:シリコーンオイルを塗布した肌に蚊がとまらない様子

1 2 3 4 5 6 7 8

JALAM学術集会委員会

関連記事