ミネラル調節ホルモン「スタニオカルシン-1」:変わらずに変わった変わり者?
III. STC1の生理機能
i) 抗アポトーシス作用
筆者の共同研究者である大河内眞也博士(現 東北大学)は、米国Tulane大学留学中、以前に報告されていた骨髄由来間葉系幹細胞(Bone marrow-derived mesenchymal stem cells; BMMSCs)が障害を受けた肺の修復に寄与するという現象に着目し [6]、同僚のGregory Block博士(後に筆者とも同僚)とともに、そのメカニズムの解明を試みていました。その過程で、紫外線照射により障害を受けたヒト由来線維芽細胞とヒト由来BMMSCs(hBMMSCs)を共培養すると、線維芽細胞の障害が軽減することを見出しました(図4)。詳細な研究の末、hBMMSCsにより分泌されるSTC1が障害細胞のアポトーシス抑制作用に関わっていることを明らかにしました [7]。まさか魚類のミネラル調節ホルモンが哺乳類の細胞でこんな役割を持っていたとは!二人の興奮が最高潮に達したことは想像に難くありません。この二人の発見が、筆者らの現在まで続くSTC1研究の端緒となりました。