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【Webinar】マウスの環境エンリッチメントと老齢モデルコロニーの維持(EPトレーディング株式会社提供)
実験動物の特殊飼料やエンリッチメント、水分・栄養補給用ジェルなどを取り扱っているEPトレーディング株式会社(https://www.eptrading.co.jp/index.html)に、JALAMのために日本語字幕付きWebinar動画をご提供いただきました。

AALAS(米国実験動物学会)2020で行った、ジャクソンラボラトリー Dr.Schile による「環境エンリッチメントと繁殖」、「老齢モデルコロニー の維持」の解説ビデオ(51分)
https://www.eptrading.co.jp/service/ssp/video.html
ARRIVEガイドライン2.0が公開されました
7月14日にNC3Rs(英国3Rセンター)にてARRIVEガイドライン2.0が公開(https://arriveguidelines.org/)されました。2010年に初めて公開されたARRIVEガイドラインは、動物実験計画において最低限記載すべき項目をまとめたものであり、Natureをはじめ多くの学術雑誌に支持されているガイドラインです。
そもそもこのガイドラインが作成された背景には、動物実験の再現性があまりにも低い(一説には70%以上の実験が再現できない)と言われてきたことがあります。その一因として実験方法の詳細が述べられていないとの指摘がありました。
英国の機関が、動物実験の記載がある271報(1999-2005)の論文を精査したところ、研究の仮説・目的を記載し、かつ動物の数と特徴が記載されていたのは271報のうち、わずか59%であったことを報告(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0007824)しています。
これらの事を受けてNC3Rsは記載すべき20の項目を定めて2010年にARRIVEガイドラインとして発表しました。多くの研究機関や出版社から支持されてきたものの、記載項目が多いことからも問題の根本的な解決には至りませんでした。そこで改訂版であるARRIVEガイドライン2.0が新たに公開されました。
ARRIVEガイドライン2.0の主な変更点は以下のとおりです。
記載すべき最低限の項目を10項目に絞った「ARRIVE Essential 10」とそれらを補完する「Recommended Set」に分類した
ARRIVE Essential 10は以下のとおりです。なお正式な日本語訳は日本実験動物学会等、公的機関によるアナウンスをお待ちください。
1. Study design(研究計画)
2. Sample size(サンプルサイズ)
3. Inclusion and exclusion criteria(包含基準と除外基準)
4. Randomisation(ランダム化)
5. Blinding(盲検化)
6. Outcome measures(実験の帰結)
7. Statistical methods(統計学的方法)
8. Experimental animals(実験動物の情報)
9. Experimental procedures(実験処置)
10. Results(結果)
前回のガイドラインが20項目であったことからも項目数を絞って記載しやすくなっていることが分かります。通常の動物実験審査においては3~5の項目を審査することは少ないのですが、今後はこのあたりも審査することが求められてくるかもしれません。
動物実験の情報発信(イギリス編)
物実験・実験動物の情報発信について、何回かに分けてお伝えしていきたいと思います。情報発信に関してはまずは先達である海外に倣えとのことで、初回はイギリス編です。なお、今回の内容はLABIO 21の記事「特集 イギリスの一般市民への動物実験に関する情報発信の状況 訪問調査研究の報告(1)市民へ動物実験の理解を促す活動団体”UAR”」をもとに構成しています。
イギリスは1800年代から動物虐待に関する法律が制定されるなどの歴史的背景から動物愛護に関する意識が非常に高い国です。そのような流れを受け、動物実験・実験動物に対しても非常に強い反対運動が巻き起こりました。SHAC(Stop Huntingdon Animal Cruelty)と呼ばれる団体がイギリスの大手CRO企業であるハンティンドン・ライフ・サイエンス社に対して放火や実験動物の連れ去りなど、非合法活動を行っていたことも記憶に新しいことかと思います。
イギリスでは1908年にResearch Defence Societyという団体が設立され、以前から研究を擁護してきました。また、2003年頃から市民に向けて研究への理解を推進するための活動を行っていたCoalition for Medical Progressという団体があったのですが、2008年にこれらの団体がまとまり、UAR(Understanding Animal Research;https://www.understandinganimalresearch.org.uk/)が設立されました。元々あった2つの団体はそれぞれ、動物実験に関する理解促進、情報発信活動を行ってきたのですが、名称からは分かりづらいという声が上がっていたことから、新しい団体には目的が分かりやすい名称となったとのことです。
UARの活動は大きく3つの活動に分かれており、ここからはそれぞれの活動を見ていきたいと思います。
教育

主に日本の中学生・高校生にあたる生徒を対象に動物実験に対する正しい理解を深めるべく教育を行っています。主な内容はボランティアの研究者や動物実験技術者による学校訪問であり、年間300件ほど行っているとのことです。現在はイギリス全土で500名ほどのボランティア登録があり、ボランティアとして登録するためにはUARが初めに研修を行います。
さらに一部希望者に関しては実際の動物実験施設への見学ツアーも行っているとのことです。受け入れ側施設の準備などもあるかと思いますが、実際に見学した生徒たちの感想を聞くと、実際に訪問してみて動物の世話が行き届いていることや、スタッフの熱心さを知ることが出来て好評とのことです。このあたりは日本でも積極的に導入していければ良いですね。
ロビー活動

最近、日本でも徐々に見られるようになってきましたが、特定の候補や政党が安易に得票を狙って「動物実験の禁止」などを訴えることの無いよう、動物実験の禁止による医学・獣医学などの発展の阻害などを丁寧に説明して回る活動を行っています。UARは団体としてこれらの活動に熱心に取り組んできたこともあり、イギリスではUAR設立後2回の総選挙を経験していますが、選挙の際にこのような動物実験禁止をマニフェストに掲げるような候補者は出なかったとのことです。日本国内でこれらロビー活動を行っている団体はほとんど無く、日本人ももっとしたたかにこういった活動に取り組むべきだと個人的には考えています。
コミュニケーション

コミュニケーションは情報発信において非常に重要な役割を果たします。UARが設立された当初はテレビや新聞などマスメディアで動物実験擁護活動を展開していましたが、現在ではインターネットやソーシャルメディアでの発信に切り替わってきているようです。動物実験反対派の事実に異なる主張に対し、正しい情報を公開し、その意義を訴えるという姿勢を明確にしており、このことによりメンバーや組織が動物実験に改めて理解を深めることで、さらに自信をもって自らの立場を鮮明にアナウンスすることも出来るようになってきているとのことです。つまりは情報発信側のトレーニングにもなっているようですね。
また、情報開示に関する活動として、UARではweb上で動物実験施設のバーチャルツアーを開設(http://www.labanimaltour.org/)しています。


上の写真はオックスフォード大学の動物実験施設のバーチャルツアーです。公開している部屋は限られますが、色の付いている部屋はすべて見ることが出来ますし、Googleのストリートビューのように360度ぐるぐる回して見ることが出来ます。また驚くべきことに、このようにサルに電極を付けた非常にシビアな試験を公開しており、逆にオックスフォードの動物実験に対する透明性を高めるものになっています。
このようにUARの様々な活動を見てきましたが、イギリスでは長年これらの活動に取り組んできただけあって非常に洗練されたものとなっています。現在、日本でもUARの活動を見習って情報発信活動を始める動きが出てきていますが、それにはまず現在の閉鎖的な環境を打破し、胸襟を開いて、動物実験はそもそも何のために行っているのかという原点に立ち返って正しい情報発信を進めていく必要があると考えています。
米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針2020年版出版記念 -紹介動画-
日本実験動物医学専門医協会は、AVMAと翻訳契約を取り交わし、「米国獣医学会 動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン):2020年」版の翻訳本(翻訳者代表 黒澤努、鈴木真)を出版しました。本ガイドラインは、国際的に容認される具体的な安楽死法を示しており、主に獣医師を対象に記載されています。専門的ではありますが、最新の情報を網羅しており、獣医師以外の動物にかかわる方々の指針としても重要な文献です。(原文はこちら)
2013年度版から改訂された2020年版では、第3章にS1コンパニオンアニマル、S2実験動物、S3家畜、S4馬、S5鳥類、S6魚類と水生無脊椎動物、S7野生動物と7つの動物に区分されて記載されています。
日本実験動物医学会および日本実験動物医学専門医協会は、本指針が広く周知されることで、わが国の動物福祉がより向上することを期待します。また、実験動物ならびにその他の動物の人道的な取り扱いを広めるための啓蒙活動を継続していきます。
米国獣医学会(AVMA)動物の安楽死指針(安楽死ガイドライン)2020年版の紹介
炭酸ガスを用いた安楽死
Compassion Fatigue(共感疲労)
Compassion Fatigueについて、さらに知りたい方はこちらもご覧ください。