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「温故知新、前島賞」
皆さんは「前島賞」の由来や趣旨をご存知でしょうか。
前島賞をご存知の方でも、この賞の由来となっている前島一淑(まえじま・かずよし)先生をご存知ない方、特に若い方に増えてきているかもしれません。そこで、このコラムでは、前島先生と前島賞を知って頂くと共に、先輩を倣い、実験動物医学を一層、発展させる事を考える機会になれば幸いです。
JALAM初代会長の前島一淑(まえじま・かずよし)先生は、1937年、静岡県生れで、1960年に北海道大学獣医学部を卒業されました。その後、1962年に東京大学伝染病研究所(北里柴三郎が創設、現東京大学医科学研究所)助手に着任され、田嶋嘉雄先生や藤原公策先生の両先生の指導の下で感染症の研究を開始し、実験動物学、無菌動物学、実験動物衛生管理学を中心に多方面にわたって業績を残されました。1973年には慶應義塾大学医学部に助教授で着任された後には(1988年教授就任)、日本において実験動物福祉や動物実験倫理の分野を開拓されました。また、獣医学系大学において実験動物学の講義を開講をされると共に、笠井憲雪先生らと共に、実験動物医学専門医制度を確立されるなど、後進の指導にも大きく貢献されました。こうした業績が認められ、2003年には日本獣医学会賞越智賞を、2005年には、日本実験動物学会功労賞を受賞されました。
前島先生のご芳名を冠した前島賞が創設された経緯ですが、2003年に前島先生が慶應義塾大学を退任されるのを機に、JALAMに多額の寄付をされました。JALAMでは、前島先生の意思を汲み取り、後継者の育成を目的とした賞(前島賞)を創設すること事となりました。前島賞は、JALAM学術集会において最も優秀な発表を行った会員1名に贈呈されます。賞の創設は2004年ですので、既に18年の歳月が流れ、毎年、多数の応募があり、本年まで18名の先生が受賞されております(下表参照)。審査にあたっては、研究の独創性及び新規性、科学的重要性、実験動物学分野への貢献と将来への期待を基準に選出されてきました。その結果、多くの優れた成果が得られ、新たな分野が拓かれてきました。これからも、JALAM学術集会(前島賞への応募)が若手研究者の一層の活躍につながる場になることを期待しております。
来年より、本賞は、日本獣医学会の賞として、学術集会優秀発表賞(前島賞)に改名されます。最近は、SDGs (Sustainable Development Goals) と言う言葉をよく耳にする様になりました。若手の研究者の皆さんには、是非、本賞を目指して切磋琢磨して頂き、継続的な成長に繋げて頂きたいものです。
歴代受賞者 (2004-2021)
第1回 | 今野 兼次郎 | 群馬大医 動物実験施設 |
第2回 | 益山 拓 | JT医薬総合研究所安全性研究所 |
第3回 | 高橋 英機 | 理研脳科学研究センター 動物資源開発支援ユニット |
第4回 | 浅野 淳 | 鳥取大農獣医 生化学研究室/北大獣医 実験動物学教室 |
第5回 | 岡野 伸哉 | 東北大医 動物実験施設 |
第6回 | 酒井 宏治 | 国立感染研 動物管理室 |
第7回 | 西野 智博 | 北大獣医 実験動物学教室 |
第8回 | 党 瑞華 | 北大獣医 実験動物学教室 |
第9回 | 近藤 泰介 | 東大農獣医 実験動物学研究室 |
第10回 | 大沼 俊名 | 愛媛大 総合科学研究支援センター動物実験部門 |
第11回 | 北沢 実乃莉 | 東京農工大農獣医 衛生学研究室 |
第12回 | 佐々木 隼人 | 北里大獣医 実験動物学研究室 |
第13回 | 中野 堅太 | 国際医療センター動物実験施設/北里大獣医 実験動物学研究室 |
第14回 | 越後谷 裕介 | 日大獣医 実験動物学研究室 |
第15回 | 松田 研史郎 | 東京農工大獣医 比較動物医学研究室 |
第16回 | 守屋 大樹 | 大阪大谷大薬応用薬学系 免疫学講座 |
第17回 | 高橋 悠記 | 北里大獣医 実験動物学研究室 |
第18回 | 橋本 茉由子 | 酪農大獣医 生理学ユニット |
コラム JALAM会員の寄稿前島賞
【Webinar】マウスの環境エンリッチメントと老齢モデルコロニーの維持(EPトレーディング株式会社提供)
実験動物の特殊飼料やエンリッチメント、水分・栄養補給用ジェルなどを取り扱っているEPトレーディング株式会社(https://www.eptrading.co.jp/index.html)に、JALAMのために日本語字幕付きWebinar動画をご提供いただきました。
AALAS(米国実験動物学会)2020で行った、ジャクソンラボラトリー Dr.Schile による「環境エンリッチメントと繁殖」、「老齢モデルコロニー の維持」の解説ビデオ(51分)
https://www.eptrading.co.jp/service/ssp/video.html
実験動物のリホーミング
最近では、酪農学園大学から引き取られた実験犬「しょうゆ」の里親譲渡の話題もあり、こちらも「実験動物の里親制度」についてのコラムですでに紹介されていますが、国内でも少なからず実験動物を安楽死せずに余生を送らせるリホーミングの活動が行われています。リホーミングは動物の福祉を考えること、また実施者の心理的負担を軽減させるという点でとても有意義なことではありますが、同時に、実験動物が社会の目に触れ、動物実験に関心をもつきっかけとなるということは、社会的に適正な動物実験を考える上でもとても重要なことでもあるのではないでしょうか。
ここでは実験動物のエンドポイントとして安楽死に代わる選択肢としての可能性があるリホーミングについて、実際にリホーミングをされた方からの寄稿を交えて、文献を紹介します。多くの方が実験動物に関心を持ち、適正な動物実験を考えるきっかけとなればと思います。
文献紹介:リホームされた実験用ビーグルは、日常的な場面でどのような行動をとるのか?
製薬企業から引き取られた実験犬の、その後に関するドイツでの調査です。
文献紹介:英国で行われた実験動物のリホーミング実践に関する調査
実験動物のリホーミングに関する英国での実態調査です。
文献紹介:フィンランドにおける実験用ビーグルの最初のリホーミング:社会化訓練からフォローアップまでの完全なプロセス
フィンランドで行われた実験用ビーグルの最初のリホーミングと社会化プログラムの紹介です。