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非アルコール性脂肪性肝疾患のモデルマウス

3.遺伝的なNAFLD/NASHモデル

 遺伝的NAFLDモデルとしては食欲抑制に関係するペプチドホルモンであるレプチンを欠損したob/obマウスが有名です。ob/obマウスは重度のインスリン抵抗性になり、脂質が脂肪組織のみならず肝臓にも蓄積します[8]。しかしながら、肝臓での炎症は起こりづらく、MCDを与えても肝臓の線維化はほとんど認められません[14]。一方でレプチン受容体を欠損するdb/dbマウスはMCDを与えると肝臓の線維化が認められるので[14]、NAFLD/NASHに関せば、ob/obマウスとdb/dbマウスは異なるモデルと言えます。db/dbマウスは鉄の過剰摂取でも肝細胞の空胞変性や、白血球の肝臓への浸潤、肝臓での酸化ストレスの蓄積、肝線維化がみられることが知られています[14]。

 レプチンが視床下部のプロオピオメラノコルチン産生ニューロンに結合すると、このニューロンはα-MSHというホルモンを分泌します[15]。このホルモンは視床下部のメラノコルチン4受容体(MC4R)に結合しエネルギー貯蔵を抑える働きがあります[15]。逆にこの受容体をコードするMc4r遺伝子を欠損したマウスは通常餌を与えた環境でも過食やインスリン抵抗性を示し、高脂肪餌を与えると脂肪肝や肝炎、肝線維化といったNAFLD/NASHの病態を示すことが知られています[15]。Mc4r遺伝子欠損マウスの肝病態は高脂肪餌を与えるとより顕著で、給餌開始8週目で肝炎像が認められ、16-24週目には肝線維化が生じ、48週目以後には肝臓がんも発症します[7]。

 ステロール調節エレメント結合タンパク質(sterol regulatory element-binding protein, SREBP)は遊離脂肪酸やコレステロール合成に関わる遺伝子の発現を調節する転写因子です[4]。SREBPファミリーの一つであるSREBP-1cを肝細胞で強制発現させたトランスジェニックマウスは、内臓脂肪の蓄積や血中脂質の増加に併せて、脂肪肝になることが知られています。しかしながらヒトと異なり体脂肪量はむしろ減少します[18]。一方で、脂肪組織でSREBP-1cを強制発現させるモデルも用いられることがあります。このモデルの場合、先天的な脂肪組織の分化異常があり、結果、重度な2型糖尿病を呈します[8]。これに伴い肝臓においても、通常餌の給餌で20週齢ごろには肝臓の空胞化、肝炎、肝線維化などNASHの病態を示します[8]。

 Alström症候群は小児期に2型糖尿病を発症しやすい疾患です[6]。Alström症候群は中心体タンパク質であるALMS1をコードするALMS1遺伝子の変異が原因とされます[6]。マウスではALMS1遺伝子のオルソログに変異をもつfoz/foz マウスが知られています。foz/fozマウスに高脂肪餌を給餌すると、インスリン抵抗性や脂肪肝に加えて、肝線維化を生ずることが報告されています[2, 12]。

 筑波大学の秋山や蕨らはp62Nrf2の2つの遺伝子を欠損したダブルノックアウトマウスは、通常の飼育環境化で飼育するだけで、30週齢には顕著な脂肪肝になり、白血球の浸潤や線維化も認められることを報告しました[1]。このマウスは50週齢になると10%の割合で肝臓がんを発症することから[1]、ヒトのNASHに似た病態を示すと考えられます。

 NASHの病態を調べるうえで一つの問題点は、疾患モデルマウスを作成するのに要する時間です。短期間でNASHを発症するモデルマウスの構築も大きな課題です。筑波大学の濱田らは毛色を決めるチロシナーゼ遺伝子を欠損させたB6(Cg)-Tyrc-2J/Jマウス(以下Tyr欠損マウス)に高コレステロール餌を給餌するとわずか3日で脂肪肝、白血球の浸潤、肝臓の線維化がみられることを報告しました[11]。これは、Tyr欠損マウスの腸ではコレステロール吸収が高まっていることが原因と考えられます。事実、高コレステロール餌を給餌すると、野生型のC57BL/6マウスと比べて、Tyr欠損マウスの血中の総コレステロール、カイロミクロン、VLDL、LDL値がいずれも増加することが示されました[11]。

コラム

食品の検査に用いられる動物実験の推移(微生物編)

・ウサギ・マウス結紮腸管ループ試験

 本試験では、動物を一定期間絶食させた後、麻酔下で開腹し、小腸に両端を結紮した腸管ループを複数作成します。ループ内に試験液を投与した後、小腸を腹腔内に戻し、腹壁を縫合します。数時間後に再度開腹し、ループ内に液体の貯留が認められたものを陽性とします。本試験法は、1990年版には、ウサギの結紮腸管ループ試験が毒素原性大腸菌の易熱性エンテロトキシンの検出法として、ウサギ、マウスの結紮腸管ループ試験がセレウス菌の下痢原性毒素の検出法として掲載されています。2004年版と2018年版には、マウスの結紮腸管ループ試験がセレウス菌の下痢原性毒素の検出法として掲載されています。

・乳のみマウス法

 本試験では、生後2〜5日の乳のみマウスの胃内に試験液を投与し、腸管内の液体貯留量を測定します。試験液の投与は、注射器の先に1cmほどの長さのポリエチレンチューブを使って経口的に行いますが、注射器で直接経皮的に胃内投与する方法もあります。1990年版にのみ、毒素原性大腸菌の易熱性エンテロトキシンの検出法として掲載されていました。

コラム

動物福祉の評価ツールのご紹介-3 福祉を評価するツールを紹介するサイト2: NC3Rsの Welfare Assessment

2.実際上の侵襲性(物理的および心理的傷害)の評価と報告

ここでは、NC3Rsを設けている英国のガイダンス“Guidance to the Operation of the Animals (Scientific Procedures)Act 1986”2)に基づいて重症度の分類や分類時の注意点について説明されています。

●「適切な資格を有する者」は、各処置の実際の重症度を「回復しない」、「軽度」、「中度」、「重度」に分類しなければならない。

●この分類の根拠は、将来的な重症度や処置の種類ではなく、日々の(ケージサイドでの)福祉評価を総括したものなので、その場で目にする重症度とは違うかもしれないし、その後の状況によっては重症度も変わっているかもしれない。

これはつまり、「求められる知識やスキルを保持している人が重症度をしっかりと判定しなさい。加えて、重症度はさまざま条件で変化するので、通り一遍にならないようよく見なさい」ということだろうと思います。

 なお、より詳しいガイダンスは、“European Commission severity assessment document and examples”に格納されている” European Commission (2012) Working document on a severity assessment framework“と”European Commission (2013) Examples to illustrate the process of severity classification, day-to-day assessment and actual severity assessment “を見るようにとも記載されています。

コラム

動物福祉の評価ツールのご紹介-2
〜福祉を評価するツールを紹介するサイト1:USDAのNational Agricultural Library〜

“Literature on Welfare Assessment and Indicators” 動物福祉の評価と指標に関する文献へのリンク集

 福祉評価と福祉指標に関する文献を検索できるよう、産業動物用にPubAg、そして実験動物用にPubMedへのリンクが検索式とともに配置されています。検索式や検索文字列作成の詳細についても触れていて、丁寧です。

“Grimace Scale”

 Grimace Scaleは「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説」(平成29年10月)に記載があり、実験動物種ではいまや標準的な福祉指標になっていますが、典型的な実験動物種以外の動物について詳しく調べようとすると案外骨が折れるので、このページを知っていると便利です。Grimace Scaleは、顔の様々な部位や体の姿勢を評価することで、動物の痛みを評価するために用いられるスコアリングシステムです。このパートでは典型的な実験動物種や家畜以外の情報にもリンクが貼られています。

“その他の Web リソース”

 最後のパートでは、マカクや動物園動物の福祉アセスメントにも対応できるようリンクが貼られています。

今回はこのくらいにして、次回は、英国NC3Rsの“Welfare Assessment”を扱いたいと思います。

 なお、米国USDAの”Animal Welfare Assessments“を閲覧される際には、ぜひ一度は、National Agricultural LibraryのトップサイトのTopicsメニューを開いて”Animal Health and Welfare”のページにも寄ってみて下さい。いろいろな情報があることにお気づきになることと思います。

コラム

動物福祉の評価ツールのご紹介-1
〜AVMA主催の“学生動物福祉状況の評価コンテスト”〜

 さて、イリノイ大のニュースによると、このコンテストの目的は、「農業、研究、伴侶など、人間のために使用される動物に影響を与える福祉問題の理解と認識を高めるための教育ツールを経験することであり、倫理的推論に対する理解の上に、科学的理論とデータに基づいた動物福祉の客観的評価を促し、批判的思考を促進し、コミュニケーション能力を向上させる」ことです。参加対象は、3・4年学部生、獣医学部生、院生(1チーム3-5人)であり、動物看護師やAVMA会員の獣医師も少数に限り参加できます(ただし、コンテストの対象外)。参加者はいくつかのシナリオに沿って出題される動物とその福祉状況を分析して、その中から優れたシナリオを選び出し、発表するというものです。

 ニュースでは、“動物福祉のさまざまな事象をそのときどきの断片として客観的かつ定量的に評価することも可能ですが、福祉問題は連続したものであり、どのあたりで許容できるか、どのあたりが好ましいか、または許容できないかの判断は、多くの場合、倫理に基づく選択に帰着するものです。コンテストでは、問題解決へ学際的にアプローチするため、科学に基づく知識を倫理的価値観と統合することを学生に教えています”という風に審査の方法について説明しています。私たちが学生の動物福祉評価を審査するのであれば、北米でどのような基準やチェック方法に従って動物福祉が評価されているのかの具体例を知りたいところです。

 今回はこのくらいにさせていただいて、次は、動物福祉評価のツールについて整理していきたいと思います。

参考文献

1) Beaver B. V. and Bayne K, Chapter 4 – Animal Welfare Assessment Considerations, Laboratory Animal Welfare, 29-38 (2014)

2) Animal welfare judging team provides unique experiential learning for students. (cited 2022. Oct.28)

3) AVMA Animal Welfare Assessment Contest. (cited 2022. Dec. 05)

コラム

実験動物の飼育環境

 Cedars-Sinai Medical Centerの研究グループは、日和見病原性真菌であるカンジダ菌がマウス腸内に存在しており、DSS投与で大腸上皮が傷害を受けバリア機能が破綻した際にデクチン1が存在しないとカンジダ菌をうまく排除出来ずに炎症が増悪化すると説明していました。これはヒトMRUC患者でも同様に説明可能とのことでした。デクチン1は特定の真菌に対する自然免疫センサー分子としての役割を持っていることから、まさに予想されうる結果です。一方、私たちの動物は極めてクリーンな環境で飼育していたことから腸内真菌が存在せず、このような増悪化は起こりようがなかったのです。そのため、デクチン1の持つ別の機能によって腸管が抗炎症の状態になっていたのです(詳細については参考文献5,6,7をお読みください)。

3. 最後に

 私たちは、再現性のある質の高い動物実験を担保するために、実験動物をクリーンな状態を保ちながら大切に飼育しています。これはがん研究や再生医療研究には欠かせないものなのですが、免疫学などに関係する研究を行う際には、少し注意が必要です。SPF環境で飼育されたマウスの免疫状態は、ヒトでいうと未成熟な幼児の状態に近いとの報告もなされています(8)。すなわち、病態を発現させるため“ちょうどよい”程度の感染症(環境微生物)への暴露も必要という概念もあると思うのですが、それをコントロールし、さまざまな研究に対して適切な環境を一律に提供するというのは現実的ではないのかもしれません。

 最近、コロナ感染を防ぐ目的による過剰な対応(行き過ぎた清潔な環境維持)のため、子供たちが幼少期にかかることの多い疾患(サイトメガロウイルス、EBウイルス、トキソプラズマなど)にかからずに大人になってしまうことが想定されており、将来の危険性が憂慮されています。

 ヒトの現実社会も、実験動物の衛生管理も、一筋縄ではいきませんね。

4. 参考文献

1. 実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準 (環境省)

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/nt_h180428_88.html (cited 2022. Sept. 29)

2. 実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説 (環境省)

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2911.html (cited 2022. Sept. 29)

3. 六匹のマウスから―「私史」日本の実験動物・45年 講談社(1991)

4. Iliev I.D. et al., Interactions between commensal fungi and the C-type lectin receptor Dectin-1 influence colitis. Science 336(6086): 1314-17 (2012) DOI: 10.1126/science.1221789

5. Tang C. et al., Inhibition of Dectin-1 Signaling Ameliorates Colitis by Inducing Lactobacillus-Mediated Regulatory T Cell Expansion in the Intestine. Cell Host Microbe 18 (2): 183-97 (2015) DOI: 10.1016/j.chom.2015.07.003

6. 唐 策ら.低分子βグルカン摂取により炎症性腸疾患を予防,改善する 昆布がお腹の調子を整える!—腸内細菌を介した分子機構の解明— 生物と化学 55(2): 128-34 (2017)  DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.128

7. Iliev I.D. Dectin-1 Exerts Dual Control in the Gut. Cell Host Microbe 18 (2): 139-41 (2015)  DOI: 10.1016/j.chom.2015.07.010

8. Beura L.K. et al., Normalizing the environment recapitulates adult human immune traits in laboratory mice. Nature 532(7600): 512-6 (2016) DOI: 10.1038/nature17655

コラム

理研マウスENUミュータジェネシスプロジェクトを利用したフォワードジェネティクス研究

 2. トーランス型扁平異形成症モデル : M413/M856マウス

 次に紹介するM413とM856マウスは共に常染色体顕性形式で体が小型化 (矮小化) するマウスです7)8)。連鎖解析によって原因遺伝子は共に第15染色体上にマップされたことから、両マウスの原因遺伝子は同一の可能性があると思われました。この領域に存在する遺伝子を調べた結果、軟骨で特異的に産生される II型コラーゲンをコードするCol2a1が原因遺伝子の第一候補として選抜され、確かにM413マウスのCol2a1遺伝子にはp.Try1391Ser、M856マウスにはp.Asp1499Alaミスセンス変異が同定されました。

 ヒトにおけるCOL2A1変異は、軟骨無発生症II型、トーランス型扁平異形成症(PLSD-T)、先天性脊椎骨端異形成症といった別々の病気の原因となりますが9) 、PLSD-T患者にp. Try1391Cys、p. Asp1469His変異が同定されていました。すなわち、II型コラーゲンの1391番目のCys、1469番目のAspが、M413またはM856マウスとPLSD-T患者で共に置換されている訳です。それぞれの変異のホモ接合マウスはPLSD-Tと類似の骨格異常を示しており、M413/M856ホモ接合マウスはPLSD-Tモデル動物として有用性であることが示されました。M413とM856マウスの間に表現型の違いはみつかっていませんが、別々の論文として発表することができました7)8) 。

 両マウスの軟骨細胞を電子顕微鏡で観察すると、小胞体が異常に拡張しており、変異コラーゲンタンパク質が小胞体内に貯留していました(図2A)。軟骨における小胞体ストレスマーカーの発現が上昇しており、軟骨細胞は高頻度にアポトーシスを起こしていました(図2B)。つまり、M413/M856ホモ接合マウスの軟骨細胞では異常タンパク質の貯留により過度の小胞体ストレスが付加され、アポトーシスが亢進していることがわかりました。PLSD-Tの第一の原因はII型コラーゲンが細胞外へ分泌されないことですが、軟骨細胞におけるアポトーシスの亢進も大きく関わっているようです。

 最近、さまざまな疾患と小胞体ストレスとの関連が注文されており、小胞体ストレス応答調節薬の創薬研究が展開されています10)。M413/M856マウスは小胞体ストレス応答調節薬の創薬研究に有用なモデル動物ですと締めたいとこですが、応用は難しいと思っています。PLSD-Tは周産期致死性の重度の骨格異常を示し、PLSD-TモデルとなるM413/M856ホモ接合マウスは出生後、すぐに死亡してしまいます。このような致死性の骨格異常を薬で直すのは、現時点では不可能であると思います。しかし、小胞体ストレスが関わっている軽度の骨格異常を示す疾患は存在しており、これらの疾患を対象とした小胞体ストレス応答調節薬の創薬研究に、M413/M856マウスから調整した培養軟骨細胞などが貢献できるかもしれません。

コラム

ブタの麻酔医〜周術期管理に関する総論的なお話〜

○循環管理:麻酔下においては、外科処置中の出血や不感蒸泄などによる循環血液量の減少、不適切な麻酔深度による血圧、心拍出量の低下、モデル動物の病態に起因した循環不全や不整脈に対応するため、心電図、心拍数、血圧をモニターする必要があります。

 術中は循環血液量を維持(心拍出量、血圧の維持)するために基本的に輸液(10~15ml/kg/hr)を行います[1, 2]。ブタでは経験的に、輸液量が少ないと腹腔内臓器を展開する際に血行動態の変化が著しく、循環管理が難しくなることがあるため、輸液はしっかりと実施した方が良いと考えています。私は絶食処置を行ったブタでは脱水(循環血液量の減少)傾向があるように感じています。絶食にともなって飲水量が減少するのかもしれません。そのため、臓器移植など侵襲の大きい外科手術を行う際には、輸液開始1時間ほどは流量を多め(30~40ml/kg/hr)にすることをお勧めします。

 また、侵襲の大きい手術の際には必ず尿量をモニタリングする必要がありますが、雄ブタではそのペニスの形状から外尿道口からカテーテルを挿入することが困難なケースがほとんどです。この場合、我々は必要に応じて開腹し、膀胱にカテーテルを留置します。

○体温管理:術中は麻酔や開腹/開胸により体温が低下しやすい状況にあります。体温が著しく低下すると血圧低下や徐脈、不整脈などの循環不全や代謝性アシドーシスの進行が認められ、生命を脅かすことがある[1]ため、ブランケットや保温マット(図4)の利用により体温の保持に努めます。また、ブタでは揮発性吸入麻酔薬や筋弛緩薬などを用いた際に、悪性高熱(筋硬直、頻脈、異常な高熱)が認められることがあるので注意が必要です。

術後管理術後の低体温を防止するための保温の実施や手術領域によってはサードスペースへの細胞外液喪失による循環血液量の減少を補うため輸液の実施について、検討、準備しておく必要があります。また、感染防止の抗生剤の投与や鎮痛剤の投与についても実施します。なお、抗生剤、鎮痛剤の投与は術前から実施しておくことが推奨されます。

 以上、ブタの麻酔について、総論的な内容を経験も交え、ざっくりと紹介しました。先生方の参考になれば幸いです。

参考文献

1. Lais M. Malavasi. (2015). In “Veterinary Anesthesia and Analgesia, The fifth edition of Lumb and Jones” (Kurt A.Grimm ed). pp928-939, Wiley Blackwell, UK.Paul Flecknell. (2015).

2. Laboratory Animal Anaesthesia 4th edition. pp 77-108, 238-242, Academic press, UK.

3. Alison C. Smith and M. Michael Swindle. (2008). Anesthesia and Analgesia in Swine. In “Anesthesia and Analgesia in Laboratory Animals 2nd edition” (Richard E. Fish, ed). pp 414-436, Academic press, UK.

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