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実験動物のリホーミング
最近では、酪農学園大学から引き取られた実験犬「しょうゆ」の里親譲渡の話題もあり、こちらも「実験動物の里親制度」についてのコラムですでに紹介されていますが、国内でも少なからず実験動物を安楽死せずに余生を送らせるリホーミングの活動が行われています。リホーミングは動物の福祉を考えること、また実施者の心理的負担を軽減させるという点でとても有意義なことではありますが、同時に、実験動物が社会の目に触れ、動物実験に関心をもつきっかけとなるということは、社会的に適正な動物実験を考える上でもとても重要なことでもあるのではないでしょうか。
ここでは実験動物のエンドポイントとして安楽死に代わる選択肢としての可能性があるリホーミングについて、実際にリホーミングをされた方からの寄稿を交えて、文献を紹介します。多くの方が実験動物に関心を持ち、適正な動物実験を考えるきっかけとなればと思います。
文献紹介:リホームされた実験用ビーグルは、日常的な場面でどのような行動をとるのか?
製薬企業から引き取られた実験犬の、その後に関するドイツでの調査です。
文献紹介:英国で行われた実験動物のリホーミング実践に関する調査
実験動物のリホーミングに関する英国での実態調査です。
文献紹介:フィンランドにおける実験用ビーグルの最初のリホーミング:社会化訓練からフォローアップまでの完全なプロセス
フィンランドで行われた実験用ビーグルの最初のリホーミングと社会化プログラムの紹介です。
文献紹介:フェンタニル-ミダゾラム-メデトミジンを用いたマウスの麻酔:拮抗剤と周術期ケアの重要性
Injection anaesthesia with fentanyl–midazolam–medetomidine in adult female mice: importance of antagonization and perioperative care.
Thea Fleischmann, Paulin Jirkof, Julia Henke, Margarete Arras and Nikola Cesarovic Laboratory Animals 2016, Vol. 50(4) 264–274 DOI: 10.1177/0023677216631458
【コメント】
国内では、一般的にメデトミジン-ミダゾラム-ブトルファノールの3剤が使用されていますが(Kawai S. et al, Exp. Anim, 2011)、ブトルファノールをより鎮痛効果が強いフェンタニルに変更したメデトミジン(0.5mg/kg)-ミダゾラム(5mg/kg)-フェンタニル(0.05mg/kg)の3剤によるバランス麻酔薬です。フェンタニルを使用するときは、麻薬研究者の免許が必要です。鎮痛効果が強いフェンタニルに変更することで、より侵襲度が高い手術も可能になると期待しましたが、足の引き込み反射、尾部および後脚第一趾骨の刺激による体動を完全に抑えることができなかったので、侵襲度の低い手術のみの適用になりそうです。著者らも侵襲的な治療や苦痛を伴う介入に使用する場合は、投与量を調整する必要があると結論づけています。
拮抗薬のナロキソン-フルマゼニル-アチパメゾールを腹腔内に投与すると、数分以内に麻酔から回復しました。現在、三種混合麻酔薬は、メデトミジンの拮抗薬のみが使用されていますが、覚醒後の鎮静時間が長く、低体温になりやすいので、ミダゾラムの拮抗薬であるフルマゼニルも併用することで、覚醒後の鎮静がより短くなるかもしれません。また、著者らは、実際に手術に使う場合は、術後の痛みを取るため、(i)フェンタニルの拮抗剤であるナロキソンを除く、(ii) 術後の痛みを数時間緩和するためにブプレノルフィンを投与することを提案しています。
JALAM会員提供動画
こちらでは当学会会員が提供する、実験動物・動物実験に関する動画を掲載していきます。
三種混合麻酔薬を用いた麻酔(マウス)
岡村匡史先生(国立国際医療研究センター研究所)
特集 動画
安楽死にまつわる諸問題 part1
コラム 動画